最近読んだ『海辺のカフカ』の一節にあった、「沈黙は耳に聞こえるものなんだ。(新潮・上巻p.291)」というセリフについて考えているうちにふと思い出して、もう一度聞いてみました。
やはり聞き心地が良いなと思う一方で、「これってどんな内容の歌詞だっけ」という疑問が浮かびました。
今まで歌詞に注目したことはなく、その雰囲気から「静寂っていいよね」くらいのイメージしか抱いていませんでした。
そこでGoogleで歌詞検索をかけ、改めて歌詞と向き合ってみると、今まで抱いていたイメージと違うように思えました。なんだか途中から、The Sound of Silenceが負のイメージを持っているように感じました。
それからいろいろと調べているうちに、色んな事が見えてきて、色んな事が分からなくなったので、今ここで少し考えをまとめてみようと思います。
まとめに当っては、①新しく見えてきた自分の解釈と不明な点②同じように解釈してあるサイトによって明らかになった点③未だに不明な点、という三つの段落に分けて書こうと思います。歌詞を解釈することに関してあまり良く思われない方もいらっしゃるとは思いますが、一学生の勉強にすぎない事なので、どうかお見逃しください。また訳の提示の際には、誤訳・誤解などあると思います。御理解の上、ご指摘頂けると光栄です。
1. 解釈
1.1. これまでの解釈
静かな調子のメロディーと、Sound, Silence, softly, sleeping, whisperなど、[s]の音を含む単語などから、何となく静かな風景を思い浮かべていた。
1.2. 新しい解釈
1.2.1. 解釈のきっかけ
肯定的なイメージで捉えていたのに、歌詞中に否定的な語句や、Silentの対義語とも言えるものが出てくる点が気にかかった。具体的には、in the restless dreams, flash of a neon light, silence like a cancer growの三点である。以下に、それぞれの箇所で新たに見えてきた解釈をまとめる。
○in the restless dreams・・・夢の内容がSilenceとはかけ離れていると言う点が見えてきた。
○flash of a neon light・・・明らかに静かな状況にはないものであり、Silenceを妨害するもの。つまり「負のイメージがある」と言うことが出来るだろう。したがって、その次に続く、 “in the (naked) light I saw……” の後にくる「私が見た物」は負のイメージのものであるはずである。しかし今まではその「私が見た物」が肯定的であると捉えていたため、解釈が止まった。この点については「1.3. 不明な点」で後述する。
○silence like a cancer grows・・・上の二点で、「Silenceを妨害するものは悪」というイメージを持っていたのだが、ここで「Silence≒Cancer≒悪」という関係が見えてきて、分からなくなった。これも後述する。
1.2.2. 文構造
「1.2.1. 解釈のきっかけ」を見つけてからもう一度歌詞を見ると、そこに特殊な文構造が見えてきた。具体的に示すため、歌詞のあるパートを引いて説明する。先に述べておくと、ここでは一番下の行のtouchedに注目する。( )内の訳は便宜上のもので、簡略化してある。
In restless derams I walked alone (夢の中、僕は歩く)
Narrow streets of cobblestone. (細い道を)
Neath the halo of a street lamp. (街灯の下を。)
I turned my collar to the cold and damp (寒さに襟を立てる)
Narrow streets of cobblestone. (細い道を)
Neath the halo of a street lamp. (街灯の下を。)
I turned my collar to the cold and damp (寒さに襟を立てる)
When my eyes were stabbed by the flash of a neon light (ネオンが光って)
That split the night (夜を裂く)
That split the night (夜を裂く)
And touched The Sound Of Silence. (そしてSound of Silenceに触れる)
(すかさず余談。訳を書いていて気付いたが、Sound of SilenceはSOSである。この意味は後で分かると思う。以下本題に戻る。)
最後のところで、Sound of Silenceに触れたのは誰か。「the... neon light that split the night and touched....」という風にとって、ネオンが触れたとするのか、ちょっと前に戻って「I turned my collar....and touched ....」と取って「僕」が触れたとするのか。ここでは後者の方がしっくりくるように思える。つまりここから分かる事は、「主語と動詞が離れている」という点である。
1.3. 不明な点
二点述べる。「1.2.1. 解釈のきっかけ」で触れた点を一つにまとめ、さらに歌詞の意味に関して一点。
○ Sound of Silenceとは何か
・その光の中に見た物は、「口も利かず話す人」と、「耳も貸さず聞く人」(訳参考:宮 寿陵さんのブログ)、そして、「声では表現できない歌を書く人」であり、「誰も沈黙を破らなかった」という情景である。これがなぜ「負のイメージを持つ光」の中に見られたのか。「沈黙を破らない事」がなぜ「悪」になるのか。
・なぜ「Silence」が悪になるのか。百歩譲ってSilence=悪が解決したとすれば、上に挙げた「誰も沈黙を破らない状況」が悪であることは解決する。しかし、それはなぜなのか。一体、「Silence」もしくは「Sound of Silence」は何を指すのか。
○ 歌詞の意味するところ
最後のところで、“人間が創り出したネオンの神”が「預言は地下鉄の壁、安アパートの廊下にある」と示す。そして人々は(たぶん人々が主語だろうが)「沈黙の音の中でささやく」のである。
・まずここの、「預言の内容」が表すことがわからない。
・ 主語は本当に人々なのかと言う点と、ここでささやく事が何を示しているのか分からない。「People bowed and prayed to the neon god they mede.......(中略).........And whispered in the sound of silence」とあるので、bowed and prayed and whisperedと読めば、「祈りの言葉をささやく」と言う風に取れなくもないが、結局何を指すかは不明なままである。
2. 問題解決
ここでは「1.3. 不明な点」で挙げた二点に関して、二つのサイトから分かったことをまとめる。ただし、記事の内容において共感できない(理解できてない)箇所もあるため、引用する箇所などは、自分に都合のよいようにする。
2.1. ブログから分かった事
まずはこちらのブログから。二点について言及されている点をまとめる。
○ Sound of Silenceとは何か
このブログによれば、現代の文明の発展(ネオンが象徴するもの)に伴うコミュニケーション喪失の事であるらしい。以下にその本文を引用する。
文明によって、蒔かされた種子は、いつしか夜という絶対の価値すらも危うくするほどに成長してしまったのだ。その中で、無批判に人々は無価値・無意味・不 条理な人生を送っている。その状態をポールは沈黙の音(ザ・サウンド・オブ・サイレンス)と規定しているのだ。すなわち沈黙の音とは、文明の中の「あるも の」(物質)を指すのではなく、文明の変化過程における「ある状態」(時間)を指していることになる。その状態とは、コミュニケーションというものを喪失 した社会における人間の有り様と言えるだろう。ここにおいて作者が「ザ・サウンド・オブ・サイレンス」(沈黙の音)というタイトルに込めた意図が明らかに なる。つまりこのタイトルは、現代の文明が、日常はき出している騒音か雑音つまり「ノイズ」ということに単純化することも可能となる。
(下線筆者)
○ 歌詞の意味するところ
この点には、私が抱いた疑問とは違う角度で触れられていたため、ここでは「And whispered in the sound of silence」の日本語訳のみ引用する。
「それでも沈黙の音の中で人々のささやきは続く・・・」
「それでも」というところから、何かもやもやしたものは感じ取れるが、直接の解答には成り難いと判断し、このブログからの引用はここで終わる。
こちらはブログではないが、参考になったので紹介する。
○Sound of Silenceとは
こちらでもやはり、コミュニケーションの喪失であるとされている。こちらではもっと「癌」と関連付けて「ディスコミュニケーションは癌みたいだ」と書かれている。
○ 歌詞の意味するところ
これに関して、なるほど、と感じた個所があるので引用する。
ネオンのメッセージが囁いている。都市そして文明こそわたしだ。わたしを拝みなさい。そういう言葉に数知れぬ人々が従っている。愚かな!
しかし、これは夢ではない。夢なのか? 暗闇よ、ぼくの親しんできた孤独の夜よ。都市の夜は、孤独で、人々との交わりも何もない。うらぶれた地下鉄駅や、どこかのアパートの汚れた壁。これが答えだと? これが預言だと?
2.2. 以上を踏まえた、二つの疑問点の自己内解決
二つのサイトを併せて考える。
一つ目の「Sound of Silenceとは」という問題は解決したように思える。また、途中の思いつきの「SOS」にかんしては、人類のコミュニケーションが発する、音にもならない「SOS」、それが「Sound of Silence」である、という勝手な妄想も膨らむ。
二つ目の点に関しても、教えてgooからの引用から、
こんな下らない預言しか与えてくれないのに、「それでも沈黙の音の中で人々のささやきは続く・・・」。何と愚かなことか。
と考えることは出来そうだ。したがって、ここの構造は、「People bowed and prayed and whispered」と取ってもよさそうである。
3. 残りの疑問点。
特に気になる点を一点だけ述べる。
・地下鉄の壁と安アパートの廊下は、ただ「下らない預言」を表すだけなのか。他に意味は特にないのか。
→①のブログを見ていると、この歌詞における単語は一つ一つ丁寧に選ばれているような印象を受ける。それなのにここではこの単語を選んだ理由がつかめない。そもそもここの解釈は正しいのかどうか不明であるが。
以上、ここまで読んでくださった方、長文・駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。もしなにか意見等ございましたら、是非お寄せください。
参考サイトリンク(勝手に参考にしました。ありがとうございました。)
後々気付いた事ですが、こちらの動画の最初に彼ら自身が少し説明を入れていましたので、最後にそれを紹介して終わります。
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