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広島大学教育学部卒業。 読書・昼寝・ゲーム・カードゲームなどを趣味とする。 RIP SLYMEが好き。宮部みゆき・東野圭吾・星新一・夏目漱石・小川洋子が好き。 最近数学・宇宙論・翻訳などに興味がある。 アニメ・声優オタ

2011年6月30日木曜日

H23 広島県教育資料 5/7 (第四章)

~言語活動の充実をとおした授業改善~

レポートの作成・論述などを通して、思考判断表現の能力を養う。言語能力は各強化の学習の基盤であるため、国語のみならず、すべての教科における言語活動の充実が大切。

1. 目指す児童生徒像の共有化

言語活動によってどのような生徒を育てるのかという目的を、全教員が共有することが大切。例としては、「自分の考えを持ち、自分の言葉で表現できる子ども」といったものである。具体的には、「リズム・テンポなど、曲の良さを表現する」などの取り組みがある。

2. すべての強化における思考判断表現力の育成

国語で培った言語能力を活かし、全教科で取り組むことが、こどもの能力向上に結びつく。

3. 指導計画への位置づけ

全教師がその必要性を理解し、言語教育を取り入れた指導計画を作成・実行することが大切である。

4. 指導事例の見方

それぞれの教科における言語教育の指導事例は、次の四点からなる。

4.1. 設定した言語活動を通して育てたい力

本時の授業を通して、どんな力をつけたいか、またその力は、思考判断表現のうちどれに相当するのかを明確にすることが、言語教育の第一歩である。

4.2. 本時で設定した言語活動

上で設定した目的を果たす手段となる活動。

4.3. 指導のポイント

実践に役立つよう、「話し方・聞き方・考え方などに関する技能」・「教材・教具」・「学習形態」などの具体的な工夫が書かれている。

4.4. 学習指導要領におけるポイント

学習指導要領で求められる取り組みのうち、指導事例と関連するものを取り上げている。


本まとめにおいては、「英語・道徳・特活・総合」について取り上げ、「指導のポイント」に焦点を当てる。

5.外国語活動 外国語(英語)

5.1. これからの外国語活動・外国語(英語)科教育について

○小学校英語では、外国語を通じた「文化の理解・コミュニケーションの態度の育成・音声や表現への順応」を図り、中学校への円滑な接続を実現する。

○生徒は小学校英語で音声に慣れ親しんでいると仮定することができる。中学校においてはその事を踏まえ、より発展的な授業を展開していくことが求められる。

○中高においては、「話す」「書く」によって発信していく力を付けていくことも求められる。そのため、「読む」「聞く」によって得た知識を、自らの考え・経験に結びつけていけるような指導が必要である。

○文法は、この四技能の指導による「総合的なコミュニケーション能力」を支えるものであるという認識のもとで指導されるべきである。

5.2. 各学校において取り組みが求められること

5.2.1. 小学校

○校内研修と教員の指導力向上○構内の学習環境の整備○地域・保護者への外国語活動の趣旨の周知徹底○中学校区内での小小・小中連携の推進

5.2.2. 中学校

○改訂の主な変更点と趣旨の理解○四技能の育成・小中の連携と接続・言語活動の充実・語彙の充実を取り入れた年間計画の作成

5.2.3. 高校

○各科目の目標・生徒の実態をふまえ、目標を明確にした指導計画・評価計画の作成○「生徒の言語活動を円滑にする」「文法を言語活動に関連付けて指導する」「ALL ENGLISHに向けた十分な準備」などを通して、授業を円滑にすすめるための体制の構築

5.3. 外国語活動・外国語(英語)科における言語活動の充実

積極的にコミュニケーションを図る態度・言語の違いに関する理解を育成し、文法を交えた四技能の指導及び語彙の指導を行う。

5.4. 高校英語の事例 ~指導のポイント~

5.4.1. ワークシートは授業の羅針盤

「生徒が内容・思考を整理する」「発表時に活用できる」「授業案の役割を果たす」などといった一石二鳥の効果を狙う。

5.4.2. 生徒同士の意見交換を促す

質問の視点を変えるなど、生徒に諦めさずになんとか答えさせるチャンスを与える。その際、生徒の知っている英語の表現で答えさせるようにする。その際必要不可欠なのは、「間違いを恐れず発表できる雰囲気づくり」である。

5.4.3. 学習指導要領

書かれている・話されている情報や考えを理解・整理し、相手に伝えることを重視。その際、文法や単語の知識が「使える形」で生徒の中にあることが必要。そのため、表現することを通した語彙学習の充実といった工夫が大切。

6. 道徳

6.1. これからの道徳教育について

○生きる力の一つである「豊かな心」の育成に努め、体験活動を通して他者・社会・自然とのかかわりの中で生きていることを実感させる。

○発達段階に応じた道徳性の育成を目的に、学校全体で組織的に取り組む。

○道徳教育の要が何かを理解し、適切な指導をする。

6.2. 各学校において取り組みが求められること

6.2.1. 小学校~指導要領の趣旨の周知・実施の徹底。先行実施内容の評価・改善~

○学校全体で取り組む

推進体制の明示と、協力体制の整備。各学校における課題の把握と、その対応策の工夫。全教育活動における道徳教育。六年間の発達段階を考慮した計画と、幼・中との接続。

○道徳の時間の充実

それぞれの学年に応じた内容の指導と、自己の生き方を見つめさせる指導を取り入れる。

6.2.2. 中学校 指導要領の周知・実施の徹底・課題の整理

○学校全体で取り組む

同小学校(ただし、三年間の計画と、小・高との接続)

○道徳の時間の充実

思春期の特質を考慮した上で、社会とのかかわりの中での人間のあり方を見つめさせる。

6.2.3. 高校

○学校全体で取り組む

小中の内容を踏まえ、各教科の特質を活かして人間のあり方を教える。特に、倫理などの公民科・ホームルーム活動などの特別活動の内容の工夫改善をする。

6.3. 道徳における言語活動の充実

価値観の形成において、書く・語り合うという活動を通した心情・判断力の形成が期待できる。「書く活動」や「話し合い」を形骸的に行うのではなく、人間の生き方を考えさせるという目的を持って実施する。また、道徳の時間内に、学校外での経験をシェアする機会を設けるなどして、身近なことからも学べる工夫をする必要がある。

6.4. 中学校の道徳の事例~指導のポイント~

6.4.1. ワークシートの活用

書く活動を通して、意見をまとめたり交換したりする機会を設ける。また、考える過程などを書き残し、それを見直すことで、自分の考えを振り返ったり整理したりするのにも役立てることができる。

6.4.2. 思考を深める板書

相対する意見や、類似する意見など、一目でわかるような構成にすることで、情報・意見の共有・整理ができる。

6.4.3. 話し合いの機会の充実

話し合いを通して考えを深めたり、様々な視点にたって考えたりすることを可能にする

6.4.4. 指導要領~表現の機会を充実させ、考えを深める指導を工夫~

自分の考えを表現させることで、様々な意見を取り入れたり発展させたりできるよう、また、自分の考えを振り返り、自らの価値観を見直せるよう工夫していく必要がある。

7. 総合的な学習の時間

7.1. これからの総合的な学習の時間について

○国が示す目標を踏まえた上で、各学校は特色のある学習活動を行う。(国が示す目標:自ら課題を見つけ・考え・判断して問題解決をする。これを通して、学びかた・考え方を身につけ、自己の生き方を考えることができるようにする)

○基礎的な知識技能は、各教科で身につけているという前提にたって、より発展的・横断的な学習を図る。その際、それぞれの発達段階を考えることで、内容の重複を避ける。

○育てる資質・能力は、各学校の目標や実態に合わせて適宜設定する。

○体験活動を適宜設けることで、生徒の学習をより充実したものにする。

7.2. 各学校において取り組みが求められること

時間数の変遷に対応すべく、全体計画・年間計画を見直す。見直すポイントは、「育てる資質・能力態度などの目標」・「学習活動といった内容」「指導法・評価方法といった指導体制」である。他にも、「探究的な授業にするための授業改善」「推進体制の整備や研修の充実」が挙げられる。

7.3. 総合的な学習の時間における言語活動の充実

問題解決において、他者との協力・言語による分析・課題とその解決策をまとめたレポートの作成などを取り入れる。

7.4. 高校の総合的な学習の時間の事例 ~指導のポイント~

7.4.1. 相手を意識した発表

新書のレポート作成など、相手に分かりやすく伝えることを目的とした活動を取り入れる。その際、書いて伝えることはもちろん、スピーチという手段も考えられる。

7.4.2. 生徒の相互評価をもとにした話し合い

お互いのレポートを、項目ごとに評価する。その評価をもとに話し合うことで、発表方法のポイントや改善方法に気づかせることができる。(言語活動の取り入れ)

7.4.3. 指導要領 ~他者と協力した問題解決~

他者との話し合ったり、評価しあったりすることで、自分の考えを深めたり、協力することの大切さを実感できたりする。

8. 特別活動

8.1. これからの特別活動について

○特活・道徳・総合のそれぞれの役割を明確化する。特活では、より良い人間関係を構築する力、自発的に活動する力、社会参画の態度・自治能力を養う。

○異なる世代・年齢の人たちとのかかわりを重視し、自らの生活を見直す機会の充実。

○体験を通して感じたこと・考えたことを振り返り、まとめ、発表しあう。

2. 各学校において取り組みが求められること

2.1. 小学校

目標に「人間関係形成力」・「自己の生き方・集団における自己の活かし方」が加わったこと、また、言語活動を取り入れることを踏まえた指導の工夫

2.2. 中学校

「重点をおく内容・特活の学習内容の相互の関連付けと統合・他教科との関連・特活の狙い」などを組み込んだ計画表の作成。評価方法の工夫。また、学校間・保護者・地域・関連機関との連携。

2.3. 高校

他教科との関連などを盛り込んだ、年間計画表の作成。人間としての生き方や、学校生活における自己の活かし方、体験活動通した社会における自己の活かし方を指導。

8.3. 特活における言語活動の充実

それぞれの活動で、集団として意見をまとめる「話し合い」、集団の秩序を守るための「ルールづくり」など、言語活動を通して人間関係を形成する力を養う。

異年齢・異世代の人間とのかかわりの中で自分を見直す。また、その課程を振り返り、言語化するなどしてまとめ、発表するという活動の中で相互的に高め合う。

8.4. 高校特活の事例 ~指導のポイント~

8.4.1. 生徒指導の三機能を生かした話し合い活動

三機能とは、「自己決定の場の提供」「自己存在感を与える」「共感的人間関係の育成」である。「役割などの選択の自由」「話を聞くなど、お互いの意見の尊重」「拍手による存在の容認・賞賛」「教師から自己開示し、打ち解けようとする」など、生徒の「自他ともに尊重していく精神」を育成する。

8.4.2. ワークシート

他人の意見をまとめ整理することで、それに対する自分の意見を整理するきっかけになったり、より相手の意見を受け入れやすくなったりする。

8.4.3. 指導要領 ~感想文の作成・発表、話し合いなどの重視~

人間関係の形成、つまり、集団として活動することを目的としている。そのため、集団で意見をまとめる話し合いや、自分たちで決まりを作って守るといった活動の充実が大切。

また、集団における自己意外にも、「三十年後の私」に関する作文といったような、自己の将来を見つめる活動も取り入れる。

2011年6月29日水曜日

人情物小説

浅田次郎(2002) 「椿山課長の七日間」 朝日文庫




「椿山課長の七日間」の存在は、映画で知った。面白い映画だったので、書店で本書を見つけたときはほとんど反射的にかごに入れていた。読んでみて、やはり買ってよかったと思った。

1. 内容の相違~それぞれの良点~
この作品の大まかな内容は、「死者が未練を果たすべく現世に舞い戻る」というものである(ホラーではない)。映画と小説では、内容が若干異なっている。どちらもそれぞれ良い点があって甲乙は付けがたいので、ここではそれぞれのよかった点をあげようと思う。
1.2. 映画
主演は西田敏行。私はこのひとが好きなので、まずここにプラスのポイント。もうひとつの点は、主人公とある女性の関係。この点が特に目立って小説と違う点であると思う。
1.3. 小説
まずなにより、感情移入の度合いである。小説独特の「引き込まれる」感覚と相まってしみじみとした気分になる。それに映画とは違って、自分の好きなところで好きなときに中断できる。様々な感情をかみしめたり、物思いにふけったりしながら、自分のペースで物語を楽しむことができる。


2. 人情物における満足感
ミステリーや推理小説もよく読むが、そこで得られる満足感は「名推理」や「大どんでん返し」などの、いわゆる「プロット」によるものである。一方、人情物においてそのプロットは「二次的なスパイス」のような存在である(主観である。)。それよりも、人間味の方に重きが置かれている(主観)。人間のすばらしさとか潔さといった点に感動する。


3. 市川拓司との比較
前掲記事「小説における美化」で触れたように、完璧な人間を見ると嘘臭く思える。しかし、本書「椿山課長の七日間」ではその「嘘臭さ」がなかった。なぜなら、その人間が完璧たる所以があるからである。
3.1. 市川拓司
 まず最初にはっきりさせたいのだが、私は市川拓司の作品が好きである。次に述べるないようは、その作品の悪口などではない。あくまで、「嘘臭さ」という点に関する私見である。
 市川拓司の作品においては、「一般人」が完璧さを備えている。それも、携帯小説のルールにあるような「いじめ」などの「負の歴史」も持っている人間である。本来ならグレたり曲がったりしそうな人間である。なのに蓋を開けてみれば「好青年」であり「女にモテる要素」を持ち合わせていたりする。虫がいい話ではないか。
3.2. 浅田次郎
一方、本書の人物は、完璧たる所以を持っている人物である。例えば、いわゆる「江戸っ子・ヤクザ」といった「人格者というステレオタイプ」をもたれている人たちなのである。喩えるなら、アンパンマンが人格者であっても不自然でないように、本書の登場人物が完璧な人間であっても不自然でないのである。


4. 感想
ところどころに散りばめられている「ユーモア」が、読んでいて非常に心地良かった。こうした「ユーモア」などによる一種の「間」が、本書を楽しむ上で非常に効果的に働いていると感じた。自分の文章やしゃべりにも、こうしたユーモアや間などを取り入れていきたいと思った。

H23 広島県教育資料 4/7(第三章)2/2

~個に応じた指導の充実~

基礎的な知識技能や、思考判断力の確実な習得には、それぞれの個性を理解した上での個々に対応した指導方を工夫することが必要。そのためには学校ぐるみの取り組みが大切。

1. 学習指導要領における個に応じた指導について

H15における指導要領一部改正で、個々に応じた指導が取り上げられた。小学校においては習熟度別の指導、中学校においては補充的・発展的な学習を取り入れることを追加。

H20の小中指導要領においても、「個性を活かす教育も充実させる」という個人指導に関する記述もある。

2. 個に応じた指導の充実

生徒の能力・適正・興味・関心・性格・知識などは個々によって違う。この特性を理解し、それに適した指導方法を考え、実施することが教師には求められる。しかし、学校目標は一つである。したがって、個々に適した指導の工夫が必要である。

3. 指導方法の工夫・改善

指導法は、各学校の状況に合わせて、それぞれの教員が工夫し、実践していくものである。具体的には、「個別学習・グループ学習・繰り返し・補充的学習・発展的学習」など、生徒の学習状況に応じたものが必要である。また、生徒の興味関心に応じた課題学習を取り入れるなどの柔軟な対応も必要である。

【本県の状況】

H22の、基礎基本定着度調査における「自分に合った学習法を知っているか」という質問にたいして、小中の各強化において肯定的な回答をした生徒は6割強である。

4. 指導体制の工夫・改善

各学校は、人員や施設・設備などの状況に応じて最も効率的な指導体制を構成し、組織として最も効率的に動くようにするのが大切。TTなどの学習の形によっては、教師が協力することで力を発揮するものもある。こうした連携を円滑にするため、全教員が共通の目的をもって行動しなければいけない。

~各学校の研究推進と研究公開~

課題に応じた教育目標の設定をし、それを達成するために研究を進めている。

1. 各学校における研究

研究は、子どもの課題の明確化・その解決策の考案が目的である。それは、授業や日常を振り返ることに他ならない。こうした振り返りを通して教師自身の指導力を向上させることが、生徒の成長につながる。

計画的に研究をすすめるには、明確なゴールを設定することが大切である。また、特に研究授業などでは、研究の全体像を全教員が共有し、組織的に取り組むことも大切である。

2. マネジメントサイクルに基づく研究

研究によっては、一年で終えるものや数年に渡るものなど様々である。どの研究においても、必要に応じて適宜評価・改善(PDCA)を繰り返していくことが大切である。

3. 研究テーマと推進体制

3.1. 研究テーマの要件

研究テーマは、「時代を反映し、先の指導に役立つ物」「学校の特色などに関連させていける物」「教科・学年を超えて取り組める物」「具体的な成果などが検証できるもの」である必要がある。

3.2. 研究を推進する体制の工夫

研究部会の役割を、「テーマ別」に適材適所振り分ける、といったような推進体制の整備が必要。その場合、各部の情報が全体に共有されるような組織を作ることが大切。

4. 研究を充実させるための視点

4.1. 授業研究の充実

研究の柱は授業研究である。各学校の課題解決を達成すべく、授業研究をより効果的に行えるよう組織的に取り組む必要がある。その時リーダーは、授業研究のあり方や参加者のルールなどを決めるなどして研究の質の向上に努める。その際、以下の点に留意する。

○整合性・独創性はあるか ○他の教科・学年、カリキュラムとの関連性はあるか

○研究の狙いに即しているか ○事前・事後研修との関連はあるか

○課題意識を持って授業を見ているか ○協議への積極的な参加を促す工夫はあるか

4.2. 中高における研究協議会の活性化

教科担任制の学校においては、教員の専門性が協議会の深化に影響を与える。ただし、他教科の協議に関しても、「発言の仕方」「一般的な指導法の提示」など、共通して取り組める課題もあるはずである。また教科が違うからこその様々な視点などもある。こうした点を考慮した上で協議会の活性化を図ることが、教師の授業力の向上につながる。

4.3. データを用いた実証的な校内研修の実施

調査や評価の結果を研究に生かしきれていない学校もある。研究のリーダーが指揮をとり、全教員参加の下でデータの読み解きを実施し、「取り組みと結果のズレ」などの分析を行うことが大切である。また、授業前後での課題状況の変化などは、授業改善にも役立つ。

4.4. 連携の推進

外部講師や他校と連携をとることで、「専門的な指導・評価」や「様々な方法・視点からの分析・研究」が可能になる。教務・研究主任同士のコネを活かし、「情報交換」や「相互評価」などによる、より効率的な研究が可能になるよう環境の整備をしていく必要がある。また、共通のテーマを他校と共同研究することも可能である。さらには、地域保護者も交えての研究にも期待が寄せられている。

5. 研究公開による各学校の研究の評価

研究の公開は、地域に開かれた信頼される学校づくりという役割の他に、「他校の取り組みの評価」という役割がある。それによって学校間でお互いを高めあいつつ、各学校においては自校の研究を充実させていくことが大切である。研究の公開時期や公開内容は、目的に応じて効果的に行えるよう工夫が必要。

6. 公開の位置づけと、効果的・効率的に行う工夫の例

6.1. PDCA

研究公開は、Cに当たる。

6.2. 効果的に行うために

まずは、研究の成果・課題を明確にしておく必要がある。公開段階においては、公開の目的、「誰に、どんな内容を公開するか」や、「普及型・提案型・報告型のいずれの公開タイプか」などを明確にする必要がある。

6.3. 効率的に行うために

研究内容のまとめを用いるなどの、研究紀要の簡略化や、人が参加しやすい公開日程・公開方法の工夫が求められる。

~教育研究団体の活動~

教育実践の深化と理論化を積極的に行うには、教研団等における自主研修の活性化が必要。

1. 教育委員会が支援する教育研究団体

本件には、広島県小学校教育研究会・〃中学校〃・〃高校〃・〃特別支援〃の四つの研究団体がある。これらの相互の連携のため、「広島県学校教育研究団体連絡協議会」なるものが組織されている。これらは、教科・領域別に部会が分けられている。

2. 教育研究団体の活動内容

2.1. 小中学校研究会

小中の研究会では、実践的な研究に力をいれている。部会ごとに公開研究会を開くことで成果の公開・共有を図る。

2.2. 高校・特支研究会

高校においては、「仮説・検証型」のスタイルをとっている。また、全県を対象にした研究会・部会などで、研究の公開を実施している。特支においては、テーマ別に研究をすすめ、研究会において成果を発表している。年末にはこれらの合同研究会が開催され、一年間の研究内容・成果の発表を行なっている。

3. 今後の活動に期待されるもの

研究へのPDCAの導入を徹底する必要がある。Pにおいては参加人数の指標だけでなく、子ども・教師の変化という研究に関わる指標も設定しなければならない。また、教材開発・指導法の提案などにおいて優れた研究を紹介し、研究成果の普及に努める必要がある。

H23 広島県教育資料 4/7(第三章)1/2

~授業力の向上~

生徒が「確かな学力」に付けさせるためには、日々の授業の質の向上が必要。「力がつく授業」の実践のため、教師一人ひとりが専門性・授業力を高める必要がある。

1. 求められる確かな授業力

生きる力のひとつ、確かな学力を育むため、確かな授業力が求められる

求められる教師像教職志望者のための都道府県別説明会参照

2. 授業力

授業の「ねらい」を達成するため、計画・実施・評価・改善をする力。以下の四つから構成される。


2.1. 授業を企画し構想する力(計画)

生徒の実態の把握した上で、明確な狙いの下で教材選択し、その内容を探求・追求するための授業を作る力。


2.2. 児童生徒の状況に応じて適切に指導する力(実施)

高い指導力のこと。一人ひとりがわかる授業を展開し、生徒の意見を授業に反映させる力。


2.3. 授業を評価する力(評価)

学習の成果を的確に捉え、授業の成果と課題を明確にする力。


2.4. 授業を改善する力(改善)

研究授業などの研修を主体的に行い、目標とする授業像に向かって工夫・改善に努め、組織の中でも生きる授業を創ろうとする力。(意欲じゃね?)


3. 授業力を高める授業研究の充実


3.1. 授業を企画し構想する力の向上


3.1.1. 指導要領の理解

授業の企画には、学習指導要領のどの項目を教えようとしているのかを明確にする必要がある。そのため学習指導要領を熟読し、各教科の目標や内容の把握が必要。他校種の目標も把握し、統計的に理解しておくことも大切


3.1.2. 教材研究の充実

指導目標達成のため、内容・補助教材・指導法を吟味・選択・分析・理解すること。

(例)

「どのような力をつけるのに適しているか」・「既習事項の理解度はどうか」などをふまえ、「指導法・指導順・時間配分・評価」を考え、付いてこられない生徒に対する策を講じる。等。


3.1.3. 指導案の作成・検討

シラバスにおける本単元・本時の位置を明確にし、「狙い・内容・活動の構成」・「その結果としての成果」を示すもの。内容や様式は、各学校の目的や意図に合うように工夫する必要がある。


3.1.4. 発問計画の作成

狙いを見据え、充実した学習活動の展開には、生徒の反応を予想した発問作成が大切である。その際、発問の妥当性(狙いに即しているか、主体的な思考を促進しているか)を考え、具体的で分かりやすい表現にするよう注意する。また、発問やそれに対する答えを類型化し、まとめに役立てる。


3.1.5. 板書計画の作成

内容をまとめることで、その授業の流れが明確になる。発言をまとめることで、学び合いの内容が明らかになる。これに向け、生徒の反応を予想した板書計画の作成が求められる。



3.2. 生徒の状況に応じて適切に指導する力の向上


3.2.1. 授業評価の充実

生徒の実態や、学習のねらいに応じた指導力が大切。自らをビデオに撮る・他の教員に参観してもらうなどして、常に自己評価・相互評価し、改善していくことが大切。


3.2.2. 教師の「ことばの力」を高める

教師の言葉は、生徒に影響を与える。そのため模範となることばの力をつけ、普段から筋道立った分かりやすい話・説明を心がけなければならない。


3.2.3. 学習規律の徹底

規律も、生徒の学力向上に必要なひとつの要素である。これは、全教員がすべての教科で、統一された方向性のもと指導をしていかなければならない。



3.3. 授業を評価・改善する力の向上


3.3.1. 授業力をたかめるための校内研修

日頃から、教師一人ひとりが自分の授業を振り返り、記録しておく。それを用いて、教師間や学校全体で個々人の授業改善に取り組むことで、より効率的な授業改善ができる。


3.3.2. マネジメントサイクルに基づく校内研修

学校が組織として働くには、個々人の知識・経験が全体に共有されることが必要である。PDCAに基づく研修の成果などの「知」の共有をすすめていくことが大切である。


【校内研修のPDCA

P

学校教育目標に即した研修計画・組織体制作りをし、生徒の現状から研究すべき内容や研修の目的を定める。

D

指導案作成・授業実践・研究授業・外部講師の活用・他校種間の連携・先進校観察など。

C

研修の分析や考察・生徒や保護者の意識調査と考察・研修の評価・研究仮説の検証など

A

課題の分析と改善計画の立案


3.3.3. 授業研究の充実のための事前・事後研修の充実

効果的な研修を行うべく、事前・事後の研修を充実させる必要がある。


3.3.4. 研修方法の工夫

「課題意識の共有」・「課題解決策の立案」など、様々な目的を円滑に果たすための工夫や、教師一人ひとりの主体的な参加し、それを実感することが大切。参加者全員で共通の課題に取り組み、切磋琢磨していけるような体制を築く等、目的に応じて適切な工夫が必要。



~マネジメントサイクルに基づく授業改善~

前掲にあるように、PDCAによる授業改善が生徒の学力向上につながる。


1. 授業改善のマネジメントサイクル

P

生徒の状況を把握し、学校教育目標に即した指導目標・年間指導計画の作成

D

学習過程や指導形態の工夫・指導技術の向上・個々に応じた指導の充実

C

学習評価の妥当性の点検・授業評価・授業公開による他の教員からの評価

A

成果と課題の明確化・指導改善計画の作成・日常的な授業改善


2. 計画段階の改善

計画作成の各段階同士のつながりや、実施・評価・改善を見通した計画作成が大切


2.1. 児童生徒の実態把握

学力調査やアンケート・観察・面接などによって課題やレディネス・既習事項の理解度を把握


2.2. 課題の明確化

以前の指導における個々・全体の課題の再認識や、実態把握結果の分析などによる明確化。


2.3. 目標の具体化・明確化

指導要領に則り、教科・学校の目標に合うよう、個々に応じた適切で具体的な目標の設定。


2.4. 教材分析~選定と開発~

教科書の研究を通して教材の価値を見出し、内容を図式化・補助教材など、個々にあった教材選択。


2.5. 指導計画

単元指導計画と年間のシラバスを関連付けて作成。

2.5.1. 単元計画

単元の目標・重点をおく内容・指導観・評価基準などを明確にして作成。また、生徒の反応や生徒に期待できる成果を予測した指導の展開・指導法の工夫が必要。

2.5.2. シラバス

学習指導要領に沿った単元の配列・指導時期の見通し・他教科との関連に配慮

【分析例(小学校算数)】

H1920のテスト比較から、児童のつまずき・課題を整理し、これまでの授業の改善に向ける。比較の結果、正答率が上がっている項目に関しては「付いている力」、下がっているものは課題とし、その改善策を考える。

大きさ・量の感覚が身についていない→日常的に単位を使うなど、量感を養う活動 など。


3. 実施段階の改善


3.1. 狙いに応じた指導法

狙いに即した学習・指導を取り入れることが必要である。特に、知識技能の習得・思考判断表現力を養うためには、丁寧に教え、考えさせ、自分の言葉で表現させるといった工夫が必要である。


3.2. 確かな指導力

確かな学力を育成するためには、教師の指導力が問われる。指導力は7つの要素からなる。

1) 話術…話し方・表情などを工夫して、生徒を授業に集中させる技術

2) 発問…目標達成の手助けとなるもの

3) 資料の活用…教科書の研究はもちろん、その内容に応じた副教材の利用

4) 教材提示…教材を提示する方法やタイミングを工夫し、生徒の内容整理の手助けをする。

5) ノート・ワークシート…学習・生徒の思考過程を整理するものとして活用し、授業に活かす。

6) 板書…内容の要約・焦点化をし、生徒の理解や内容整理を助ける。

7) IT…カメラ・ネットワークを駆使し、生徒によりよい学習環境を与える。

4. 評価段階の改善

評価は、学習状況の把握には欠かせない。個々に対応した評価や、学習過程に注目した評価を取り入れ、一人ひとりを多面的に把握していくことが必要である。また、授業評価など教師自身の評価も忘れてはならない。授業評価は、自己評価・相互評価・生徒による評価・保護者による評価などが考えられる。いずれにおいても、見つかった課題の改善に務める姿勢が必要である。

5. 改善段階の改善

語呂合わせの項目(お役所仕事乙)

6. 「ひろしま」学びのサイクル

ひ:広く知識技能を習得し

ろ:論理的な

し:思考判断力をつけ(無理やり乙)

ま:学ぶ意欲を高めよう

学び、考えたことを生活に生かし、さらなる学びを求めるというサイクル。「しっかり教え」「じっくり考えさせ」「はっきり表現させる」というサイクルであるらしい。また、この「はっきり表現」を通して、彼らの中でお互いに評価・改善が期待でき、「もっと学びたい」につながるのだそうだ。


H23 広島県教育資料 4/7(第三章)2/2へつづく