八冊目:ことばと文化 鈴木孝夫著 岩波新書
まとめ+私見
1.英単語学習の落とし穴
英単語の学習と聞くと、「ある英単語とそれに対応する日本語のペアを覚える」 ということを思い浮かべる人も多いと思う。しかし、それだけでその単語をマスターしたと思ってはいけない。英語の単語にも日本語の単語にも、それぞれに意味する範囲が決まっている。
1.1break
よくみる訳は、「壊す」である。では、我々日本人は花瓶などを”壊す”だろうか。 棒きれを真っ二つに"壊す"だろうか。日本語ではそれぞれ「割る」や「折る」をあてはめるであろう。つまり、break≠壊すである。逆に、「お腹を壊す」は、英語ではhave the trotsなどと言う。
1.2drink
これも、飲むでは事足りない。例えば、「薬を飲む」時は、takeを使う。このように、「飲む」と言う動作ではなく、「何を」という目的格が問題になることもある。
1.3鼻
単語と意味が1:1にならないものは、動詞以外にも見られる。それは、ある対象を指し示す言葉:名詞である。例えば「鼻」。人間の鼻はnoseだが、ゾウの鼻はtrunkである。
1.4社会習慣をも包括する、言語の”意味”
我々が『犬』と言えば、人間のともだち・ペットの代表例などと考えるだろう。しかし中国などでは、「食べ物」というカテゴリーにもいれられる。このように、その国の社会習慣をまでも言語は包括しうるのである。
2.言語の相対性
名詞は絶対的である。たとえば、「本」はいつでもどこでも「本」である。もちろん、Bookにも成りうるが、この「ことばと文化」という本は、どこへ行っても「ことばと文化(kotoba to bunnka)」である。しかし、形容詞の中には、場所・場面によって変わるものもある。
2.1相対的形容詞
10cmのものさしがあるとしよう。これは”長い”だろうか。例えば、1ミクロン程度の微生物を測ろうとすれば”長い”かもしれない。しかし、日本の東京とアメリカの距離を測る場合は”短い”だろう。このような、”長い”や”短い”などは、相対的な形容詞と言える。これらは、具体的にイメージできないものである。絶対的に”長いもの”は?と聞かれても、イメージすら持てない。「(宇宙の外に何もないとしたら)宇宙の端から端までの距離」と答えられるかもしれないが、「じゃあその距離をXとしたら、2Xの距離より長いかい?」と言われたらおしまいである。
2.2絶対的形容詞
その反面、色などは絶対的と言える。絶対的に赤いものは何?と聞かれて、信号のとまれ・タカノツメなどと容易に答えることができる。(ここでこれら二つの色は、いわゆる”赤”の示す範囲に含まれるものとする。)
2.3highとtall
両者はともに「たかい」と訳される。しかし、Highは「地面との距離」、Tallは、「横幅より高さの方が大きい場合」を暗黙の了解とする違いがある。
3.「ぼく」の人称
英語では、一人称は「I」、二人称は「you」である。「I」は二人称には成りえない。しかし日本語では、一人称である「ぼく」が、二人称にも成りうるのである。それは、ヨーロッパでは会話の視点が常に自分にあるのに対し、日本では目下:特に子供との会話では、視点が子供に映るからである。このように、言語について考えるとき、文化の背景が言語にもたらす影響を無視することはできない。ことばと文化の結びつきは、非常に”強い”ものである。
感想:今までとは全く違う切り口で言語を見ることを鈴木孝夫さんは我々に教えてくれる。このほかに読んだのは、「日本語と外国語」しかないのだが、これからもそのほかの著書もぜひ読みたいと思う。「日本語と外国語」のまとめは次回する。感想もその時に、二冊まとめて書く。
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書評(というか感想)、日ごろ思ったことなどを、思うままに書いていくメモ帳的なブログ。いつかこれを見返して、何か自分の中に再生産されるようなメモ帳になればいいなと思います。
自己紹介
- ironustak
- 広島大学教育学部卒業。 読書・昼寝・ゲーム・カードゲームなどを趣味とする。 RIP SLYMEが好き。宮部みゆき・東野圭吾・星新一・夏目漱石・小川洋子が好き。 最近数学・宇宙論・翻訳などに興味がある。 アニメ・声優オタ
2011年4月13日水曜日
ことばと文化
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