二作目:やさしさの精神病理 岩波新書 大平健著
最近の日本における「やさしさ」とは何なのだろうか。
この本にある「やさしさ」の一例は、席を譲らない「やさしさ」。
これは、席を譲る=相手を年寄り扱い=よくない
という現代日本における不思議な現象から生じた「やさしさ」である。
そういえば、と、ふと考えると、最近身のまわりでも変な「やさしさ」を見つけたり、周りの人が言う「あの人やさしーよね」に同調できなかったりする。
それで、いったい優しさ・優しいとは何なんだろう、と思って買って読んでみた。
結論から申しますと、この本による「やさしさ」は、
「お互いを傷つけないやさしさ」
でありました。
もう少し付け加えると、
過去において、優しさは、”慰め”、”思いやり”であり、
この「やさしさ」は、”不干渉”にあります。
優しさが、傷ついたものをいやすものから、
あらかじめ誰も傷つけない配慮
にとってかわられたのです。
もっと詳しい変遷を書きますと、
①人の心を和ませる=優しい
②お互いの傷を舐めあう=やさしい
③お互いに傷をつけない=「やさしい」
となります。
ただ、この三つのヤサシサには共通点があります。それは、 人間関係における潤滑油の役割です。
つまり、現代の日本の若者が求める人間関係は、お互いに干渉しない関係、hot ではなく、もう少しcoolな関係:warmな関係であるということができます。
最近、人形をペットにする人が増えたのも、このせいだと言えます。なんせ人形は、傷つかない。心がありませんから。さらに、私たちを傷つけることはしない。人形は私たちに反論しないし、すべて受け入れてくれる。なぜなら、人形の意思は、持ち主が恣意的にきめることができますから。また、人形が死んで私たちを置いて行ったり、悲しませたりしませんから。
これぞ現代日本における究極の「やさしさ」ではないですか。
時代とともに変わる言葉は
言葉とともに変わる時代を象徴している
といっても過言ではないように思います。
やさしさの精神病理:アマゾン
書評(というか感想)、日ごろ思ったことなどを、思うままに書いていくメモ帳的なブログ。いつかこれを見返して、何か自分の中に再生産されるようなメモ帳になればいいなと思います。
自己紹介
- ironustak
- 広島大学教育学部卒業。 読書・昼寝・ゲーム・カードゲームなどを趣味とする。 RIP SLYMEが好き。宮部みゆき・東野圭吾・星新一・夏目漱石・小川洋子が好き。 最近数学・宇宙論・翻訳などに興味がある。 アニメ・声優オタ
2011年4月13日水曜日
究極のやさしさ
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