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広島大学教育学部卒業。 読書・昼寝・ゲーム・カードゲームなどを趣味とする。 RIP SLYMEが好き。宮部みゆき・東野圭吾・星新一・夏目漱石・小川洋子が好き。 最近数学・宇宙論・翻訳などに興味がある。 アニメ・声優オタ

2011年4月13日水曜日

9:漢字廃止・日本語ローマ字表記・・・お前は何を言っているんだ。

九冊目:日本語と外国語 鈴木孝夫著 岩波新書
まとめ+私見
1.ご飯とおかず
どんぶり飯を出されたら、当然おかずもあるだろうと考える。しかし、ヨーロッパでそれは通用しない。まず米は米だけで食べてしまってからメインに移る風習もある。ここに「米」という共通項を見出したことで、「おかずも一緒に出てくる」とまで考えてはいけない。日本には日本の、ヨーロッパにはヨーロッパの米の食べ方がある。このような文化の違いは、言葉にも現れる。こういった違いは辞書にはほとんど乗っておらず、端から逐一・丁寧に調べて検証していかなければならない。
1.1色
「あお」と言って、「緑」を指す老人がいる。また、「茶色」の砂糖を「赤砂糖」と言う。これらは、「色の示す範囲」と、「他と比べた時の色」を表している。日本語の青の範囲に、いわゆる緑は含まれる。また、茶色い砂糖は白い砂糖に比べて赤みを帯びている。このような色の使い方がある。
1.2種類
クジラは哺乳類なのになぜ魚偏か。昔、海を泳ぐものの総称として「魚」をつかった。だから、クジラには昔の意味での魚偏が付いている。英語のjellyfishfishも、同じ理由からではないかと推測できる。
1.3色か形か
リンゴのような・・・と言えば、「赤い」何かだと推測する。しかし、ある国においては、「丸い」なにかだと推測することもある。またりんごについては、その色も国によって違う。
1.4虹
虹の色は連続している。よって、「色はいくつあるか」という質問は、ふつう成立しない。しかし、文化による色の捉え方の違いで、虹の色が何色か、という概念が出てきた。音もそうである。英語には5つのがある、と言うのを聞いたことがある人もいるかもしれないが、こうした音も「おえういあおえ・・・」と言う風に連続したものを恣意的に分けたものにすぎない。これらは文化によって・国によって異なる。
2.イギリス人を理解する
イギリス人とひとまとめにするのは人種差別ではないか」と言っていると、他の文化を理解することは出来ない。「何か違いがあるはずだ」と常にアンテナを張って細かな違いに気付くことが、異文化理解の第一歩である。
2.1イギリス人が食べないもの
イギリス人に出してはいけないものは、馬肉である(もちろん、馬肉を食べるイギリス人もいるかもしれないが。)。これは言わば、豚肉を食べない宗教の人に豚肉を出すようなものである。
2.2足は恥部
イギリス人が靴を脱がないのは、足を恥部の一つと考える慣習が背景にある。もちろん慣習が違えば、靴の形・作りも違う。これらを理解してやっと、イギリス人を理解したことになる。
3.漢字の働き
漢字は難しく、数も何万とあり、漢字を廃止して日本語をローマ字表記にしよう、という考えまでも起きた。しかし、漢字はその覚えにくさと引き換えにある利益をもたらしてくれる。
3.1一目瞭然
まずこれを見比べていただきたい:acrophobia,高所恐怖症。これら二つは、同じ(ような)意味を持つ。どちらがわかりやすいか。高所恐怖症は、もはや日常語になっているから分かるのかもしれない。ならばこれはどうか:apivorous,蜂食性。多くの人には所見であろう単語も、日本語の漢字なら大体の意味はわかると思う。最初のは「高いところが苦手であるという性質(体質)」次のは、「蜂を食べる性質」である。聞いただけでは分からないかもしれないが、見たら分かる。
3.2一目瞭然
「とる」と聞いて、何を思うだろうか。手に「取る」・虫などを「捕る」・・・幾通りもあって、聞いただけでは分からない。しかし、先に示した通り漢字を使って書くと、だいたい何のことかわかる。英語では、これが音でわかる。get/grasp/catch....それは、英語の音の分け方(音素)が日本語より多いから可能なのだ。どちらがいいというわけではないが、少なくとも漢字は日本語の弱点を補っている。これを廃止はないだろう。
3.3なぜ漢字は分かりやすいか
大きく二つに分けてまとめる。
3.3.1音と訓
英語の難しい単語は、古語であるギリシャ語やラテン語から来る。死語が語源なのだ。つまり、誰も語源がわからない。聞いても見ても分からない。しかし日本語の漢字は音と訓とを持ち合わせている事によって、難しい単語における音読みも、漢字に直して直接見たときは訓読みである意味と結びつく。「トウ」と聞いても分からないが、「頭(トウ)」と書くと、「ああ、頭か」と分かる。
3.3.2部首
「さんずい」・「くさかんむり」など、その種類を教えてくれる働きの部首を持つことで、理解を一段と楽にしてくれる。もちろん英語にも似たような「語幹」がある。しかしこれは分かりにくい。水を表すのがwaterではなくhydro-などの、一般に見慣れないものだからである。


感想:目のつけどころが細かい。ここまで細かくなくてはいけないのか、と思うくらい細かい。しかし鈴木さんは、それを当然としている。そして何より、日本の事をよくご存じである。英語だけ・外国語だけやって、その国の文化だけ学習すればぐろーばるな人間になれるなんて思ってはいけない。某H大学の大先生は、中高一貫校で三ヶ国語(日英+α)を教え、ぐろーばるりーだーなる人材の育成を夢見ておられる。その是非はそれこそ、人それぞれだと思う。

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