十三冊目:哲学入門―生き方の確実な基礎― 中公新書 中村雄二郎著
まとめ+私見
1.哲学とは
1.1哲学の普遍性
哲学とは、物事の根源に立ち返り、そこに本質を見出し、その普遍性を確立するものである。物事を普遍的に捉えるには、様々な視点を持ってせねばならない。つまり、自分の考え・立場を一度疑ってみなければならないということだ。たとえその考え・立場が一度確立されたものであっても、もう一度疑うべきである。言わば、哲学そのものを疑ってこその「哲学」なのだ。
1.2哲学という「ドラマ」
「ドラマ」においては、人間性のすべてを言葉に閉じ込める。そしてその言葉を互いにぶつけ合いながら進展していく。この言葉という概念は、人間の中にある「情念・観念」を表現するために用いられる。
「情念・観念」は、言葉に成ることで「意味」を持ち、他人と共有が可能になる。つまり、「意味」は普遍の物であると言える。この普遍的なものを「ロゴス」という。
一方、「情念・観念」には、個人差がある。同じ食べ物を食べても
、「おいしい」と感じるか「まずい」と感じるかは人それぞれであるように、物事の感じ方も人それぞれである。つまり「情念・観念」は、普遍ではないと言える。これを「パトス」という。
したがって「言葉」は、「ロゴス」と「パトス」の入り混じったものになる。この「言葉」を用いて他人・自分自身と「対話」を通してぶつかり合うことで、自らの立場をより一層確立することができる。このことから、哲学は「知性のドラマ」であると言える。
2.歴史における対話
「歴史とは、歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去の間の尽きることを知らぬ対話である。(本書P.123)」
2.1過去と現在の対話
「現在」は常に「過去」に依存している。過去が無ければ現在もない。つまり、「過去」と「現在」の永続的な関係が「歴史」である。歴史とは、「過去」と「現在」の対話である。
2.2歴史家と事実の対話
歴史とは、「事実」の積み重ねであるといえる。そしてそれぞれの「事実」がお互いに因果関係を持つ。このようにして、「事実」は「意味」を与えられる。「意味」は「歴史家」が与えるものであり、そこには人間の「意思」や「欲」が含まれる。歴史とは、「歴史家」と「事実」の対話である。
2.3作られた「歴史」
「事実」と「意味」に似た関係として、「制度」と「フィクション」が挙げられる。制度とは、“客体化”された“普遍の”ルールである。しかしこの制度は、人間によって“主観的に”作り出されたものである。つまり、もともと「フィクション」として作られたものが、「リアル(現実世界)」の物として存在している。これを「事実」と「意味」にあてはめると、フィクションとしての「意味(主観)」を与えられた「事実(客観)」によって構成されるのが「歴史」である、ということができる。疑う余地ありということだろうか。
3.「自我を超えた自我」との対話
哲学における「自らとの対話」は、以下の二通りの言い方がある。
3.1「神」との対話~人間と人間との対話~
「神は人間であり、人間は神である」という考えがある。これはつまり、「神」とは「人間の理想形」であり、「人間(自己)」とは、非理想形の人間である、ということである。こうして「理想的な人間像」を設定することで、「非理想形の人間」である自分の「目標」とする存在を作った。このことで自分たちは、より「理想の人間」に近づこうとした。
3.2自分自身と向き合う~宗教を通じた自分との対話~
神と言う存在を設けることで、自我を超えた存在を獲得することはできた。しかし、これと対話する「場」を設けなければならない。それが、広い意味で宗教であると言えるだろう。これによって「自我を超えたところ」から「自分」と話をする事が可能になる。
4.日本に哲学なし
常識には富むが、それ以上挺出しない。こんな内容の事を中江兆民は言っている。と言うのも、日本人の思想態度が「非哲学的」であったからだという。
4.1日本人の「美」
いき・わびさび・もののあわれ、どれをとっても「その本質を人間がどう捉えるか」が大きく影響している。また、「台風」も「まぬがれることができればいい」と言う存在で、「なぜ台風ができるのか」という“本質”には迫らなかった。つまり、感受性は豊かにはなったが、思索の欠如があったと言える。哲学の本質である「疑う」ということをしなかった。こうして「人間の感覚」という“フィクション”が、「美・強い風」という“現実”のものなっている。それらが“普遍である”と早とちりして、それ以上の詮索ができないのだ。
4.2日本人の哲学
日本の「美」が、日本人にとって絶対的なものであることは変えることができない。しかし、それを一つの「情念・観念」として見直すことは可能であろう。このような、日本人の「感覚でとらえる力」は、哲学に生かすことができるのではないか。
感想:哲学がどんなものなのか、その輪郭がぼんやり見えてきたような錯覚に陥る一冊。哲学とは?と聞かれると、「疑うことを通して物事の本質を見極めること・・・ではないですか。」ぐらいにしか答えられない。そんな、本書の半分も理解できていないという状態でまとめを書いた。そのせいで、私の勝手な解釈(誤解)を含む文章になったと思う。詳しくは、本書に当たるか、他の人がまとめた文章を参照されたい。また、(もしこの文章が誰かの目に触れるのであれば)ご指摘頂きたく思います。
アマゾン:哲学入門―生き方の確実な基礎―
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