「健やかな体」の育成
1. 健康教育の充実
子どもが心身ともに健やかに育つことは、国や時代を超えた人類の願いであり、健康教育は「生涯を健康に過ごす生活の基礎を培う」という役割がある。一方現在、メンタルヘルス・食習慣・登下校の安全等、様々問題がある。小・中・高・特支の新学習指導要領でも、「心身の健康の保持増進」・「学校での食育」・「安全に関する指導」が表記されるなど、問題への対応の充実が求められる。
1.1. 学校における健康教育
成長・発達段階にある子どもが集い、人格形成をしていく学校と言う場では、心身ともに健康の保持増進が求められる。よって、保健教育・安全教育・食育を有機的に関連させた教育の充実が不可欠である。指導面においては、これら三点を統合したものを、「健康教育」として位置付け、組織的に取り組んでいる。
1.2. 子どもの健康・安全を取り巻く状況
社会状況・生活状況の変化に対応しきれず、精神的な課題を抱えたり、食習慣が身についていなかったりする子どもの増加に加え、子どもが巻き込まれる事件など、解決すべき課題は多い。
―課題―
「生活安全:事故・事件」「交通安全・自然災害」「メンタルヘルスに関して:生活習慣の乱れ・いじめ・不登校・虐待」「食生活の乱れ:偏食・朝食欠食・肥満の増加」「問題行動・薬物乱用」「感染症」など
1.3. 現代的課題への対応
1.3.1. 学校保健安全法の趣旨
上記課題に適切に対応するため、1) 教員それぞれの役割の明確化と、連携体制の整備 2) 地域・保護者との連携体制を整備し、関係機関・地域の専門家の知見などを最大限に活用する。
【学校保健】
○養護教員を中心とした連携体制の充実
○地域の医療関係との連携による、保健管理の充実
○学校の環境衛生水準を確保するために、全国的な基準の法制化を図る
【学校安全】
○事件・事故・災害に対応した総合的な安全計画の策定、学校内安全の確保。
○危険発生時の対応を各学校ごとに行い、的確な対応が出来る体制を整備する。
○警察・地域ボランティアなどとの連携による安全強化。
1.3.2. 学校給食法の趣旨
子どもに、食に関する正しい知識・食習慣を身につけさせることが大切。
【食育。学校給食】
○給食を活用し、食に関する知識を含めた食育の充実:給食における目標設定など。
○学校給食の水準を全国的に法制化する
1.4. 今後の健康教育の進め方
1.4.1. 体制作り
校長のリーダーシップのもと、子どもが抱える課題・教員一人一人の役割を明確にし、組織的な体制の整備。また、保健・安全・食の指導の全体計画を作成する必要もある。
1.4.2. 教育活動全体を通じた取組
発達段階に応じた保健体育・道徳・総合・特活など、全教育活動において実施。この時、計画段階から教員間の連携を図り、主体的な学びを提供する工夫が必要。
1.4.3. 地域の専門家や官憲機関との連携
学校医・学校歯科医・学校薬剤師・警察などの専門的な知識・経験を活かした指導が必要。
特に、メンタルヘルスに問題がある生徒には、カウンセラーや保護者との連携が大事。
1.5. 保健教育の充実
1.5.1. 保健教育の充実
保健学習(健康安全に関する知識)と保健指導(特活等で、実際の問題解決を通した学習)の密接な関連が鍵。
<ポイント>
健康に関する基本的な事項を理解させることはもちろん、各学校の現状・実態に即した計画を作成し、実践的問題解決を通して体験的に学習させることで、「思考・判断・意志決定・行動洗濯」などの実践力を育成する。実施に当たっては、地域・保護者・教員が連携して組織的に行い、専門知識を活かした個別指導や集団指導の相互補完。
1.5.2. 安全教育の充実
安全学習(安全に関する知識を統計的に理解すること)と、安全指導(実際の生活に活かすこと)を密接に関連させ、積極的に安心で安全な社会づくりに貢献できる人材の育成。
<ポイント>
各学校の実態に即した計画を作成し、日常生活における事故・事件の現状・原因・防止法などを理解させることで、実際の危険予測・回避能力を育成し、さらには自他の安全に配慮し、自ら進んで危険な環境の改善が出来る実践力を育成する。この時、警察や地域ボランティアとの連携を取りながら行う。
1.5.3. 食育・給食指導の充実
【学校給食法が定める「学校給食の目標」】
○適切な栄養摂取による健康保持増進
○食事に対する理解を深め、健全な食習慣を養う
○豊かな学校生活を通して、社交性・共同の精神を養う(孤食対策?)
○自然の恩恵を忘れず、生命・自然を尊重・保全する態度の養成
○食生活と活動の関係を深く理解し、勤労を重んずる態度の育成を図る
○食文化・伝統への理解を深める
○食の流通・消費に関する正しい理解の促進
<ポイント>
各学校の実態に即した計画を作成し、栄養教諭を中心に教員間で連携し、給食を「生きた教材」として最大限に活用した指導を心掛ける。給食を日々の生活一般に関連付けるよう工夫し、地域や保護者と連携して個別指導の充実を図る。
2. 体力つくりの充実
体力は、生活面・学習面両方の活動の源であり、「生きる力」の重要な要素である。子どもたちの心身の調和的発達に向けて、積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲の育成が目的である。そのために、「行動体力:筋力・調整力」と「防衛体力:体温調節・免疫」の二つをバランスよく向上させることが大切。また、
○運動の至適時
・脳、神経系…7~8歳
・呼吸、循環系…12~13歳
・筋、骨格系…15~16歳
2.1. 体力つくりを学校教育活動全体で取り組む必要性
授業外での継続が必要であるため、「運動が好きに・得意に」なることを目標に、生涯にわたり運動に親しむ態度を身につけさせるのが大切。
○学校内での体力つくりの場
「保健体育」「総合:健康問題・国際スポーツ」「特活:レク活」「部活」「休憩時間」
2.1.1. 体育・保健体育科授業における体力つくり~「体つくり運動」の一層の充実~
運動する子・しない子の二極化が問題。心身の一体感・仲間の身体の状態に気付き、体調を整えることが出来るよう、運動の習慣をつける。また、【体ほぐし】【多彩な動き】【体力を高める】という「体つくり運動」の定着を図ることも大切。
2.1.2. 運動部の活動での体力つくり
部活は、運動の楽しさを知り、生涯親しめるスポーツを見つけるための教育活動の一環。
2.1.3. 始業前、昼休み、放課後等の時間での体力つくり
特に小学校では、仲間と楽しみながら体力測定する等、休憩時間に運動させる工夫が必要。子どもの遊びは、「身体能力:運動技能・体力」・「知性:ルールの理解や工夫」・「社会性:協調性」の育成に不可欠のものである。
2.2. 体力・運動能力調査の結果を活用した体力つくりの推進について
H12から「広島県児童生徒の体力・運動能力調査」を実施。学校平均と県平均を比べて課題を見るける。
「2.2.1.」「2.2.2.」の調査結果は省く。
2.2.3. 授業や学校教育活動全体の取り組みへの活用例
a) 課題把握
全国平均を参考地に、一人一人・学年別・学級別・男女別の課題を把握する。個々の種目の数値だけでなく、「筋力・柔軟性・敏捷性」等、要素別に把握する。
b) 具体的な目標の設定と推進計画の作成
把握した課題に基づき、全教育活動における具体的な計画を設定する。
c) 具体の取り組み
授業では、爽快感を味わえ、積極的に参加したくなるような工夫を、学校教育活動においては、空き時間を活用する工夫をする。生徒に運動の必要性ややり方を理解させ、それぞれにあった運動を見つけさせる。
3. 食育の充実
豊かな人間性を育み、生きる力を付けるには不可欠の要素。健全な食生活を身につけさせることを目標とする。
3.1. 食育の必要性
社会案きょうの変化などによる、食生活の乱れが目立つ。成長期にある生徒らにとって、生きる力の基礎でもある健康と体力は必須。
○食を取り巻く課題
a) 栄養の偏り・食生活の乱れ
夜型の生活や孤食が目立つ。心身の健康問題に関わり、肥満・生活習慣病・痩身志向という問題を誘発
b) 失われつつある食文化や社会性
海外に食を依存したり(米離れ)、外食が増えたり、物を大切に出来なかったりする。地域性・マナーの低下につながる。
○改善に向けて付けさせたい力
a) 「各学校の目標」と「教育目標の実現の観点から」
「赤・黄・緑の三食の食品を食べる。」・「自分で料理をする」
b) 感謝の心を育成
「食事のあいさつが出来る」・「食事の手伝いが出来る」
c) 地産地消の推進・郷土料理の継承
「地元の産物を給食に・郷土料理を知る」・「郷土料理を食べる」
3.2. 学校における食育
3.2.1. 食に関する指導の目標
cf. HP: ホットライン教育ひろしま「平成22年度教育資料 第1章 10 食育の推進P.55」
3.2.2. 食育の推進体制の整備と食育推進リーダーの役割
全教育活動に食育を組み込むには、「ねらい」等に関する全教師の共通理解を図る必要がある。そのために、明確な目標・教員間の連携などが求められる。
<食育推進リーダーの役割>
生徒の実態を把握・報告、また校長や他の教員との情報交換・給食の現状などの情報提供などを通じて全体計画を作成する。この時、給食・特活などの時間の内容・目標を明確に。
3.2.3. 健全な食生活の実践に向けた具体的な取り組み事項
児童・地域の実態を踏まえ、家庭・地域との連携を通して「食に関する知識・食を選ぶ力・食習慣」を身につけさせる。
例1) 福山の中学校「弁当の日」
年に2回生徒がお弁当を作る日を設ける。「自立、感謝、絆」等の精神を育む。連携がなせる技。
例2) 三原の小学校 「地場産物への興味・関心を高めるための指導方法の工夫」
各教科に食を関連付けるとともに、給食に地場産物をとりいれることで、郷土料理への理解を深める。三年時には、社会科で食を扱い、メロンの栽培様子を見学など、直接的な体験でそこにある工夫と苦労を知る。
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