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広島大学教育学部卒業。 読書・昼寝・ゲーム・カードゲームなどを趣味とする。 RIP SLYMEが好き。宮部みゆき・東野圭吾・星新一・夏目漱石・小川洋子が好き。 最近数学・宇宙論・翻訳などに興味がある。 アニメ・声優オタ

2011年6月28日火曜日

カーデュラ探偵社とクロスファイア

本まとめは、「カーデュラ探偵社」と「クロスファイア」の二作のまとめである。



1. ジャック・リッチー著 
駒月雅子訳 「カーデュラ探偵社」河出文庫(2010)



本書は、この間の翻訳ミステリー読書会の世話人をされていた駒月さんの訳書であり、短篇集である。訳者である駒月さん本人に「星新一が好きなら読むといい。絶対面白い」と言われ購入した。


1.1. 星新一ではない?
本書は、「カーデュラ・シリーズ」という探偵ものから始まっている。駒月さんのお言葉通り、星新一を念頭において読み始めたのだが、一向に星さんの要素が見当たらない。要素は見当たらないが、物語自体は面白かった。
1.1.1. 主人公のキャラクター
読み始めてまず、主人公のキャラクターに惹かれる。また、解説を読んで気がついたのだが、この「カーデュラ(Cardula)」という名前にはちょっとした仕掛けもあるようだ。
1.1.2. シリーズ物として
シリーズ物では登場人物が決まっているため読みやすい。また、水戸黄門を見るような安心感もある。本書では、最初の8編がこの「カーデュラ・シリーズ」である。

1.2. 星新一の要素
てっきり、全部「カーデュラ・シリーズ」だと思い込んで読んでいたため、9編目が非常に読みにくかった。「カーデュラはまだか!」と思っている間に読み終えてしまった。慌てて目次を見ると、9編目以降に「カーデュラ」の文字がない。ここでやっと気づき、9編目をもう一度読み返してみると、星新一のような面白さがあった。星新一を探してカーデュラを見つけ、カーデュラを探して星新一を見つけるとは、なかなか皮肉なものである。

1.3. 本書の勧め方
「面白い本」をさがしている人にはもちろん、「探偵ものが好き」という人や、「星新一が好き」という人にも薦められる本である。ただし、「探偵もの」や「星新一」関係ですすめるときは、「最初の8編は探偵ものであること」・「星新一の要素があるのは9編目以降であること」を明確にしなければならない。また反対に、本書から「探偵もの」や「星新一」につなげることも可能である。




2. 宮部みゆき(2002) 「クロスファイア」 光文社文庫



「逆スピン・オフ」
本書は、同社出版の「鳩笛草 燔祭 朽ちてゆくまで」(2000)に掲載されている「燔祭」が発展した物である。私はこの「燔祭」を読んでいたので、その辺の細かい事情に関して楽に理解できた。もちろん本書「クロスファイア」は、読んでいない人にも十分わかるように書かれている。





3. 特殊能力と報復殺人
以上挙げた二作には、共通の点がある。「特殊能力」と「報復殺人」である。
3.1. 特殊能力
どちらの作品にも、特殊な人間が登場する。SFが好きな人は、惹かれてしまうような設定である。
3.2. 報復殺人
若干のネタバレではあるが、どちらの作品にも「報復殺人」が出てくる。片方の作品ではあまり触れられていないが、もうひとつの作品ではこの「報復殺人」がテーマの一つであるといえる。このように、ある二極的な問題を含む小説などを取り上げて「道徳教育」に活かすことはできないのか、など考えた。


4. おわりに
全く関係の無い小説同士でも、恣意的に見ればそこに何らかのつながりが見えてくる。小説内で思いを巡らせるのはもちろんだが、小説間で思いを巡らせるのもひとつの楽しみであって良いのではないかと思う。

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