本書は『人形はこたつで推理する』『人形は遠足で推理する』の続編です。
『人形は遠足で推理する』は、以前ブログにレビューを残しましたが、前者は未だ読んでいません。本書は、『人形はこたつで推理する』と間違えて購入したものです。
本書を読んで感じたことは、「人間味がある」という点です。人形なのに人間味があるというのもありますが、人間も非常にリアルな感情をもって書かれています。
1. 文体
本書の語り手は、基本的には女性です。しかし、ある一部の回想部分だけ、語り手が変わるところがあります。そこでハッとしたのが、文体の違いです。語り手が女性であるか男性であるか、はたまた中性であるかが、文体から見てとれるような気がしました。
例えば、宮部みゆきを読んでいると、男性が語り手のはずであるところでも、文体からは女性が喋っているような印象を受けることがあります。しかしこちらは、語りである地の文からも男性らしさ・女性らしさが見て取れるように感じました。
2. 感情
本書では、女性の気持ち・男性の気持ちが非常にリアルに描かれているように思います。日常における気持ちの錯覚や、思いとは逆に向かう羽目になるような出来ごと、気持ちの移り変わる過程などが、非常にリアルに描かれています。ついふっと感情移入してしまって、もどかしさを感じてしまう場面などもありました。
3. 推理小説として
以上述べたように、一応推理小説ではありますが、推理とは別の面からでも楽しめます。ここで問題となってくるのが、「推理小説として中途半端なものになっていないか」という点です。確かに、本格推理小説として読むには軽すぎますが、短編の推理物を読んだような満足感はあります。中途半端と言えばそう言えるのかも知れませんが、「推理小説の部分」と「そうでない部分」のメリハリが付いていて非常に読みやすいという点を考慮すれば、十分満足のいく「推理小説」ではないかと思います。
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