広島の商工会議所でサテライト中継された、
慶應丸の内シティキャンパス2011年度前期『夕学五十講』
というものを受講してきました。毎回オムニバス形式で様々な方が講演されるのですが、今回は書道家の武田双雲さんの、「夢の叶え方」というお話しでした。そこであったお話しを、以下に三点にまとめようと思います。
1. 夢を持て
武田さんは終始、夢を持つことの大切さについて説いておられました。またそのお話しの中で、「夢を持つとはどういう事なのか」という点にかんしても触れられていましたので、以下に二点にまとめます。
1.1. 巨人の肩に乗る
「私たちは、昔の人たちが叶えた夢の上に立っている」。武田さんはそう語ります。その例として挙げられたのが「洗濯機」。もっと楽に洗濯がしたい、という昔の人の夢があり、それがかなえられた形として「洗濯機」が生まれました。そして、「さらに楽に洗濯がしたい」という夢が何度も叶えられた結果として、現在の洗濯機があります。このような、日々の小さな願いや「欲望」を持つことも、「夢を持つ」という行為の一つなのです。
1.2. 夢における「点」と「線」
夢を持つという事は、ゴールを作ることです。しかし武田さんは、「ゴールを作る行為そのものが目的なのではない」と言う点を述べています。ゴールを設置することで、私たちは日々の生活で、そのゴールに興味を持つようになります。武田さんの場合、「世界を感動させる」というゴールを設置したところ、「世界とはどこまでを指すのか」・「感動とは何か」といった事を真剣に考えるようになったという事でした。ゴール地点という「点」を定めることも重要ですが、そこにたどり着くまでの日々の生活という「線」を大切にすることで、「夢を持つ」という事の真価が見えてくるのです。
2. 夢と欲望
日々の小さな願いや欲望も夢の一つである、ということを【1.1.】で述べました。現代の日本において、この「欲望」は「悪いもの」として禁じられている傾向にあります。しかしそのことで、元気の源でもある「良質の欲望」までも禁じられてしまっているのではないか、という点を指摘しています。この点についてもう少し詳しくまとめていきます。
2.1. 「欲望」と「夢」の違い
欲望は夢の素です。しかし両者には、根本的な違いがあります。
2.1.1. 欲望
欲望は、今現在持っていないものを欲する心であり、そこには若干のネガティブなイメージがあります。つまり、欲望を抱く背景・前提として、「何かが欠けている・心が満たされていない」という点があるという事です。
2.1.2. 夢
欲望と比べて、夢は「欠落」を前提としません。したがって、夢にはポジティブなイメージがあります。しかし、一見反対のもののように思えるこの二者には、実は密接な関係があります。
2.2. 「欲望」が「夢」に変わる時
どんな夢も最初は欲望であると、武田さんは言います。挙げられた例としては、「お金持ちになりたい」という欲です。こうした欲望は「磨き鍛える」事で夢に転化すると言います。例えば、お金だったら「いくらほしいのか」・「その使い道は何か」など、細かいところを詰めていくことで、漠然とした欲がだんだん具体的な像を持つようになり、夢と呼べるものになっていくのだそうです。またこの時のポイントは、「自分だけの個性的な夢にすること」と、「世間にとって魅力的である夢にすること」です。この二点のバランスが大切なのです。
3. 夢の叶え方
最後に、今回のタイトルでもある「夢の叶え方」に関してまとめます。キーワードは、「夢へのビジョン」・「言葉の力」です。
3.1. 夢へのビジョン
ここでは「空海」の言葉を引用しておられました。「悟りを開いたつもりで世間にまみれなさい」という言葉です。これに関して、もう少し詳しく記述します。
3.1.1. 認めてくれない症候群
夢へのビジョンを描くことの重要性を示すために、「認めてくれない症候群」という概念を用いて説明されていました。これには滝修行が例に挙げられています。「悟り」という概念がなんなのかを議論することなく、我慢して滝を浴び続けることをがむしゃらに続けても意味がない。挙句の果てには、「なぜこんなに頑張っているのに悟りが開けないんだ、どうして認めてくれないんだ」と嘆くことになる。この状態を「認めてくれない症候群」と言います。
3.1.2. 夢を叶えたものとして生活する
夢へのビジョンを描く一つの方法として、「夢をかなえたものとして生活する」というのが挙げられました。空海の言うところの「悟りを開いたつもりで世間にまみれなさい」というものです。普段の何気ない生活も、「もし俺が夢をかなえた状態なら、いったいどう行動するだろう」と考えることで、その「夢」がどんなものなのかを知ることが出来るというものです。別の言い方をすれば、「成功した自分を描く」という事です。
3.2. 言葉の力
ここでは主に、「書く」という行為に潜む言葉の力に注目して語っておられました。書くことで人間の潜在意識に作用し、無意識のうちに書いたことに注意しながら生活することになるんだそうです。また、書いたことを壁にはっておくと、より効果があるとのことでした。これは、【1.2.】で述べた「ゴールに興味を持つ」という効果をさらに強めたものと捉えることも出来るように思います。また、このほかにも「書くことによって目標の整理が出来る」という点も重要だと述べられています。
これらのことから、「夢の羅列」をすべきだという点を強く主張されていました。この「夢の羅列」は、実際に参加者に課した課題でもあります。「書けば夢はかなう」。これが武田さんの信念でした。
4. 書くことのもう一つの活用術
夢をかなえるという文脈からは少しずれますが、書くことで日々の習慣を変えることが出来るという事も主張されていたので、それもここに紹介します。
私たちは日常の中で、「嫌だな」とか、「めんどくさいな」など、重荷に感じていることがいくつかあります。そんなときは、本心とまったく反対の事を書けばいいそうです。例えば、朝起きるのがつらいという人は「僕は朝起きるのが楽しみでしょうがない。早起きして、朝の気持ちいい空気を吸って、珈琲を飲みながら優雅な朝を過ごすのが好きだ」という内容の事を書けばよいのです。それを続けることで、いつか本当に朝起きるのが楽しみになるのだそうです。
感想
要するに気の持ちようという事でしょうか。ただ、書くことのが持つ力については見過ごすことが出来ないと感じています。言語を教えるという行為には、必然とライティングという活動が含まれます。このライティングの活動でも、「アウトプットの場」や「正しい文法で・いい内容のものを書く場」などという意識のほかにも、「書くことの力を実感する」という視点もあっていいのではないかと考えました。今後はこの考えを深め、発展させたり見直したりしていけたらなと思います。
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