~学校の自主性・自立性の確立~
1.1. 学校評価システムの導入の背景と意義
評価については、H12の「教育を変える17の提案」において、外部評価・評価結果の開示・改善につなげる等の必要性が提案された。広島県においては、説明責任が大切であるという立場から評価制度を取り入れている。説明責任を果たすためにはまず、自分の学校の現状を把握し、それを改善していかなければならない。そのためには「PDCAシステム」の導入が必要である。そこで実際に、2年間ほど「PDCAシステム」を実験的に導入した結果、非常に有効であることが分かった。今では、PDCAシステムを採用して、「教育活動の組織的・継続的改善」・「開かれた学校づくり」・「教育の質の保証と向上」に励んでいる。
評価の基準は学校ごとに設定されていたのだが、教育基本法や学校教育法・学校教育施行法が改正されたことによって、「学校関係者評価」という外部からの評価を受ける制度も加わった。「自己評価(内部評価)」ではPDCAシステムを用いて評価し、「学校関係者評価(外部評価)」では、「自己評価」の結果と、実際に学校を観察してみての感想とを照らし合わせて、保護者らが評価する。
1.2. 学校評価システムの充実
評価システムの充実には、「目標の設定」「学校評価に関する規定」「情報の積極的な提供」の三点に注目する必要がある。
【目標の設定】
各校長が目標を設定し、その計画を策定して教育活動や運営を行う。その時、学校の実態や、地域保護者のニーズを把握し、最終目標と中間目標の原案を作成し、運営会議等で検討したうえで決定しなければならない。また、各学年・各教科での目標の作成を、それぞれの所属教員の意見を聞きつつ策定する必要もある。計画の実行においては、各教員がそれぞれの個人目標と全体目標を関連付けて行う。こうしたなかで重要になってくるのは、柱となる目標の重点化である。それによって、全体の目標が明確化され、地域に開かれた学校・教員の目標の統一化に向けることが出来る。こういた、教員・地域家庭が一丸となった運営が重要である。
【学校評価に関する規定】
基本法等の改正に準じて、広島県の高校管理規則の改正も行われ、「自己評価」と「学校関係者評価」の理念の共有がなされた。この二つの評価法に関して、学校評価ガイドラインでは以下のように整理してある。
1) 自己評価
学校評価の基礎となる「自己評価」は、校長のリーダーシップの下、全教員が参加して行われなければならない。設定した目標とその達成状況・現在の取り組みの適切さを評価。
2) 学校関係者評価
保護者・学校評議員・地域住民・接続する学校等が、実際の観察を通して「自己評価」の結果を再評価するもの
3) 両者の関連
両者は、有機的かつ一体的に関係づけられるべきである。学校関係者評価は、学校改善と地域をつなぐ「窓口」であり、意見を取り入れたり活動の状況を伝えたりする役割を持つ。したがって学校側には、保護者に十分理解されうる活動や情報提供が求められる。
【情報の積極的な提供】
学校の状況を分かりやすく提供することが、保護者を学校の運営に参画させる最も有効な手である。また、学校の取り組んでいる内容をアピールすることで、理解や協力を得るという手も考えられる。このシステムは、地域と一体になってこその評価システムである。生徒の能力や可能性をより効率よく引き出すためのシステムにするために、これからも協力体制を築き上げ続けることが求められる。
2. 人事評価
2.1. 人事評価制度
信頼される学校を作るには、教員の意欲・資質を向上させ、信頼される教員組織を作ることが必要である。そのために、「自己申告による目標管理」と「勤務評価」という二本の柱を設けた評価を進めている。
【自己申告】
個人目標は、まず各教員が決める。それを校長などとの面談を通して、学校目標に整合するよう調整する。一定期間後にそれが達成されたかどうかを評価する。こうして、各教員が職務に責任を持ち、学校経営目標の達成に貢献するようになる。
【勤務評定】
能力や実績・意欲を的確に把握し、その後の研修や適材適所の配置に活かす。
2.2. 人事評価制度の流れ
○5月までに、自己目標の設定とその達成への指導を済ませる。
○校長は、授業参観などを通して各教員の取り組みの状況を把握しておくことが必要。
○各教員は年度の中間期に中間発表を行い、そこで校長との面談を通し、取り組みへの指導や助言を仰ぐ。この時、人事異動調書の内容に関して聴取する。(12月末まで)
○12月1日を基準日として行う勤務評定では、的確な評価と指導・助言が出来る評価者を用意することが大切。
○各教員は、年度末に自己評価の最終申請を行い、校長はこれまでの指導などを「自己申請書」に記入。その自己申請書は、県立校は県教委に、市町立校においては市町教委に提出。
3. 開かれた学校づくり
情報発信や、「学校へ行こう週間」の設定など、積極的に取り組んでいる。
3.1. 「ひろしま教育の日」関連事業
県民の教育に対する意識の向上に向け、11月1日をひろしま教育の日に定めた。また、11/1~8までの週をひろしま教育ウィークとした。この一週間で、教育に関する県民からのメッセージを募集し、その中の最優秀作品をポスターに掲載するという事業を開始。また、学校へ行こう週間や、学生に向けた県立の資料館・博物館の無料開放の実施などもしている。
3.2. 学校へ行こう週間
全県的に、学校を公開する週間。H21には、36万人もの来校者・来園者があった。地域の方と一緒に遊んだり、自由に参観してもらったり、神楽を実演したり、キャリア教育の実態を見せるべく手作りのパンでおもてなしをしたりなど、各学校の特色が活かされている。
3.3. 学校評議員制度の導入
地域住民が学校運営に参画する仕組み。学校が保護者らの意見を把握し、学校運営に把握させるなどして彼らの協力を得る、学校としての説明責任を果たすなどの狙いがある。
4. 学校運営協議会制度の導入
これまでの運営の改善に向け、保護者や地域の声を反映させるために導入された。この運営協議会がある学校を、コミュニティースクールと言う。コミュニティースクールは、学校・家庭・地域が一体となって、よりよい教育に実現に取り組むことを狙いとしている。また、それによる地域の活性化も期待される。この委員には、地域住民や保護者は必ず含まれる。それに加えて、学校長・大学教授など、教委によって任命されるものもある。この協議会は、小中高特・幼稚園全ての公立校に設置できる。
学校運営協議会の役割は、主に、校長が作成する運営基本方針の承認、教職員の任用に関して教委に意見する、という二点が挙げられる。
5. 特色ある学校づくり
様々な教育問題を抱え、学校・社会・家庭の在り方が問われている現在、それぞれの学校が内外の特色を生かして質の向上に努めていく必要がある。ここでいう特色とは、単に珍しいだけでなく、各学校の生徒の状況にあったような、生徒の個性を伸ばせるような体制を言う。生徒を伸ばすことが目的であり、特色のある学校の作成が目的ではない。学習指導要領には、それぞれの学校がその特色を活かしつつ、生徒の「生きる力・主体的に取り組む態度」をはぐくみ、それぞれの個性を活かせるように教育を充実させなければならない、とある。各学校が、自主性・自律性のもと、創意工夫を活かした教育課程を編成し、責任をもって実行していくことが大切である。
5.1. 教育課程編成のポイント
○主体
各学校が主体であり、校長のリーダーシップのもとに編成する(前掲:是正指導参照)。
○カリキュラムマネジメント
学校の特色を生かし、それらをカリキュラムと結びつけ、教育課程の基礎に基づいて「自主的かつ自律的に」編成・展開し、改善すべき点は改善するという経営の具体的な方策(カリキュラムマネジメント)が必要。カリキュラムマネジメントを円滑に進める手段として、PDCAシステムが挙げられる。この時、「評価項目」やそれらの「評価指標」さらには「評価規準」を定める必要がある。
○自己評価と自己点検
自己評価・自己点検を怠らないことが必要である。指導計画・指導方法・運営上工夫した点などを評価・点検し、改善していくことが教育課程・教育の質の保持・向上につながる。
○評価の観点と方法
評価は、「指導要領や教委の指針を反映しているか・目標を追求する姿勢とその成果・実態に即した教育課程になっているか・施設や設備の点から見て適切か・保護者や地域の期待に応じているか」という観点から、「全教員の協力のもとで行う・計画的に行う・多面的、継続的、客観的な評価をする・多様な評価の材料を考慮して教育活動の状況を把握する」という方法でなされるべきである。
5.2. カリキュラムマネジメントを支えるもの
重要な点は、学校の教育活動と経営活動を対応させる点である。そのため、学校ごとにそれぞれの課題の解決法を共有し、教師ひとりひとりが学校づくりに参画していることを実感できるようにするなど、組織の構造(人材や運営力など)を整備することが必要である。創意工夫に満ちた教育課程の編成・実施に関しては、計画的な評価と、それを受けての改善を重ねていくことが大切である。
~危機管理体制の徹底~
学校保健安全法の目的(第一条):学校の児童・教員の健康の保持のため、教育が安全な環境下で円滑かつ安全に行われるよう、必要な事項を定めることが目的
1.危機管理の目的
学校での児童・教員の安全の確保に向け、「環境整備」・「事件事故の未然防止」・「事件事故への迅速な対応のための体制整備」の三段階の危機管理を行う事が重要。
2. 子どもの安全を取り巻く状況
学校内では、「遊具による事故」・「校舎からの転落」・「熱中症」があり、通学路においては「交通事故」・「犯罪」等がある。そんな中学校では、・交通安全・生活安全(防犯)・災害安全のそれぞれに対処することが求められる。これは、「学校保健安全法」によって明確化されている。
3. 子どもの安全を守るための学校の役割
3.1. 子どもへの教育において
日常の危険やその対処法に関する理解を深め、「危険予測」・「自らの安全な環境づくり」を通して的確な行動選択が出来るよう、また、自他の生命を尊重し、進んで安全活動に貢献できるように指導する。
3.2. 教師側・地域側
安全点検を通して不審者の侵入やそれによる事件を防ぎ、安全な環境づくりに努める。また、登下校での安全確保のため、地域と連携して通学路の安全点検を定期的に行う。
4. 学校安全に関する学校の危機管理体制の充実
4.1. 学校安全の計画的な実施
「施設・設備の点検」・「通学路を含めた生徒の日常における安全教育」・「職員の研修における安全点検」の三点を組み込んだ「学校安全計画の策定・実施」
4.2. 安全点検等環境の整備
「施設・設備」・「通学路」の安全点検と、その結果に基づく危険個所への対応が求められる。また、必要に応じて臨時の点検も大切である。
4.3. 学校における人的体制の充実
連携や、安全計画の策定の中心となる「学校安全主事・主任」を公務分掌で明確にし、学校安全委員会などの組織を充実させる。
4.4. 緊急時の体制の整備
「緊急時の対処法・情報の共有・応急手当・関連機関や保護者などへの情報提供・被害にあった子どものケア」等を明記したマニュアルを策定し、教員に周知する。また、訓練・課題の確認・見直しを通して、マニュアルの実用性を高めることも大切。
4.5. 学校安全に関する教職員の資質能力の向上と研修の充実
「環境整備・防犯訓練・応急手当の訓練・心のケアに関して」など、「事前・発生時・事後」の三段階における研修を実施。研修は、具体的事例に即して行う等の工夫が必要である。
4.6. 家庭・地域社会との連携による安全管理体制の強化
開かれた学校づくりを通して地域・家庭の信頼を得、ボランティアやPTA、さらには専門家や有識者との連携による安全体制の強化が必要。
5. 三段階の危機管理におけるポイント
5.1. 事前の危機管理
5.1.1. 危機への備え
最悪の状況を想定し、予知・予測に常時努めることで、突発的な事件に対応できる。
5.1.2. 未然防止の取り組み
緊急時の対応の理解と対応力の向上、教師・生徒間の信頼関係や施設等の環境の整備。
5.2. 発生時の危機管理
危機に対して迅速かつ的確な対応をし、拡大防止・早期収束に努める。
5.3. 事後の危機管理
危機への対応の検証・生徒のケア・教員の危機への意識の再構築など、再発防止と、今後の教育の再開に向けた対策を講じる必要がある。
6. 危機管理マニュアルの作成について
次の四点に留意する。
(1) 危機管理における具体的な対応策・教職員の役割の明確化すること。
(2) 「学校の方針」「事前・発生時・事後の対応」「再発防止対策」を盛り込むこと。
(3) 自校の「規模・子ども・連携状態」や、地域における状況に合わせた対策をすること。
(4) 人事異動・通学路等の変化・先進校の事例等を確認しながら、保護者や専門家等の多方面の意見を取り入れて作成・見直しをすること。
学校における転落事故防止のために(図。一例なのか、その他の留意点なのかは不明。)
○共通事項
事故情報の共有・現状把握・安全指導の充実・施設面の配慮、が挙げられている。
○個別自校
窓・バルコニー・庇・屋上・天窓、などをそれぞれ取り上げて記載してある。
○その他
駐車場の屋根・屋内運動場・クラブハウス、といったものに関しても点検せよとのこと。
7. 児童生徒の問題行動に関する危機管理
7.1. 生徒指導に関する危機管理の基本的な考え方
いじめや暴力行為等は、いつ・どう起きるか予測がしにくい。したがって、どう防止するかはもとより、「どう対応するか・どうやって被害を最小にとどめるか」についてもしっかり考えたうえでの、危機管理体制の確立が必要である。
7.2. 問題行動発生時の危機管理
問題発生時の「適切な初期対応・事実確認」が不十分だと、指導の目的を児童や保護者に理解してもらえない。悪い場合は、トラブルや苦情に発展することもある。こうしたことから、「初期対応・事実確認」を全教員に周知し、徹底することが大切である。また、基本的には複数の教員での対応が望ましい。
7.2.1. 初期対応
発生している問題を制止して悪化を防ぎ、「言葉による毅然とした指導」や「加害・被害児童のケア」を十分にする等の事後指導を徹底する。その際、現場の状況(生徒は煙草を持っていたか・窓ガラスが割れていたかどうかなど)を見誤らないためにも、感情的にならず、冷静に対応することが求められる。初期対応を適切に行う事が、確実な事実確認へ繋がる
7.2.2. 事実確認
当該生徒が問題行動の事実を認めることが第一歩(自白が目的って警察か。もちろん、「威圧的態度・体罰を行使する等、行き過ぎた指導はいけない」と触れられてはいる。また、「問題行動を把握したその日に対応」とあることから、教師が実際に見て確認した、生徒が100%黒の状況下における指導であることが見て取れる。どこまで教師の視覚を信用するかは、各々の常識に基づいてという事であろう。)。
個別指導が基本であり、事実確認・確認事項の自書(5W1H)を行う(←体罰でありイジメwお役所自爆)。これらを徹底することで特別な指導・家庭との連携に繋がる。
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