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広島大学教育学部卒業。 読書・昼寝・ゲーム・カードゲームなどを趣味とする。 RIP SLYMEが好き。宮部みゆき・東野圭吾・星新一・夏目漱石・小川洋子が好き。 最近数学・宇宙論・翻訳などに興味がある。 アニメ・声優オタ

2011年7月10日日曜日

幼小中高及び特支の学習指導要領改善について まとめ

幼小中高及び特支の学習指導要領改善について

0. これまでの経緯

0.1. 教育基本法改正
H15、中教審における「教育改革の推進方策」に関する諮問がきっかけで一部改正。H17には、21世紀を生きる子供たちの教育の充実を図るように要請があり、「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」をまとめた。翌H18には教育基本法の改正があった。それを踏まえ、各学校段階・各教科における教育のあり方に関する審議が行われ、この時、外国語の専門部会から小学校英語教育の審議の状況に関する情報を受けた。こうした審議は、生徒の学力・学校の教育課程実施状況に基づいて行われたとのこと。

0.2. 教育基本法改正をうけて
H19には「改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正(答申)」がまとめられた。それを踏まえ、「学校教育法」「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」「教育職員免許法及び教育公務員特例法」の三法の一部改正がなされた。これらの改善を踏まえ、小中高における教育課程の改正の審議が行われ、11月にそれらのまとめが出された。そのまとめにおいて、小中高での指導要領改訂が必要という結論に至った。


1. 指導要領改訂と教育の目的

1.1. 目的
教育基本法1条で、教育の目的を「人格の形成・国家の形成者の育成・健康な国民の育成」としている。つまり、一人ひとりの人格形成と、それに付随する国家の形成である。

1.2. 改訂
経験主義・単元学習に偏り過ぎた学習指導の内容を、「基本的知識・技術」「知徳体の均衡」に移行した。一方、「個性の重視」「生涯学習」「変化への対応」に関しては変更ではなく、「思考判断表現力」や「主体性」の育成の追加があった。そしてこの力を「生きる力」とした。


2. 現行学習指導要領の理念

2.1. 先を見据えた「生きる力」
これからの21世紀を展望した教育のあり方を踏まえ、「基礎力をもって変化に対応し、主体的に判断・行動し、他人を思いやりそして協力していける豊かな心をもち、社会の形成に一役買える力」という生きる力重視している。これは、現在の知識基盤社会において重要な力である。

2.2. 知識基盤社会と「生きる力」
知識は、国境を越え、日々進歩し、柔軟な思考に基づく判断を要し、性別を問わない。こうした知識基盤社会における競争に参加していくには、「生きる力」に定められる能力が必要。つまり、生徒同士の切磋琢磨を通してこの力を身につけ、社会に出てからもお互い切磋琢磨していける能力の育成が求められる。こうした考えは国際的に共有されていて、OCEDではこの能力を「キーコンピテンシー」と呼んでいる。また、内閣府人間力戦略研究会の「人間力」もこれに当たる。

2.3. 目標としての生きる力
文化や伝統を重んじ、国際社会を生きる日本人の育成が目標である。また、生涯学習の重要性も説かれた。これらをまとめると、三点て示される。「基礎基本の知識技能」「知識技能を活用する思考判断表現力」「学習意欲」である。つまり、生きる力である。


3. 子供たちの現状と課題

3.1. 現状
生徒はボランティア活動などへの参加に肯定的であり、保護者の70%は学校に満足している。

3.2. 課題
3.2.1. 学力
基礎基本の知識については向上したが、その応用が効かない。特に国語・数学(算数)における活用・応用力は低い。また、古典への関心が薄れているという現状もある。これらをまとめると、「読解・記述問題」「要約などの、必要な情報を正確に伝える能力」「仮定と結論の理解」などに関して課題があるという事になる。つまり、「生きる力」が足りない。
3.2.2. 学習状況
生きる力にも個人差があり、それは日々の学習態度からくるものではないかとされている。例えば、読書が好きという子どもの正答率は高い、といったものもある。しかし、理科や数学が好きという子どもの減少、テレビ・ゲームの時間の増加などあり、家庭学習の時間が減っているのは事実である。このことから、一概には言えないが、学校では学習意欲の向上が薦められるべきである。
3.2.3. 心理状況
自制心・規範意識の希薄化による学級崩壊や問題行動など、人間関係形成能力に問題がある。これらの要因のひとつに、社会環境・生活様式の変化が挙げられる。運動習慣の衰退などが一例である。こうした要因も、学習意欲に並んで個人差が生じやすい。


4. 課題の背景
子どもがそだつ環境は学校だけではない。その他の環境の変化が原因となる場合がある。
4.1. 社会・家庭・地域
教育の基本は家庭である。しかし、核家族化等による「異年齢感交流の減少」などあり、家庭における教育の様態が変化してきている。また、社会の変化の中で生徒の不安をかきたてるものが、「大学全入時代」の到来である。

4.2. 学習指導要領の5点の不手際
4.2.1. 生きる力の理念の共有
まず、「生きる力」の理念を保護者らと共有出来ていない点が挙げられる。「ゆとり」「詰め込み」のどちらに加担するでも無い、それこそ「生きる力」の裁量でもって教育していくことの大切さが共有しきれていなかった。
4.2.2. 子どもの自主性を尊重しすぎた
自ら考えるというのは、「教師が教えるのは少し」という規制をかけるものではない。
4.2.3. 各教科と総合的な学習の時間との連携の不備
各教科で得た能力を生活に活かすことが大切である。そしてそれを推進する役割が、総合である。各教科におけるレポートなどを総合において他教科と関連付けるということが必要であるが、授業時間の削減などによってその実現が難しくなっている。
4.2.4. 各教科における「生きる力」の指導
授業時数の減少により、教科内容を教えるのに精一杯になってしまっている。
4.2.5. 社会の変化に対応した取り組みがなかった
社会の変化に対応した指導による「豊かな心の育成」がおろそかになっていた。つまり、家庭・地域社会との連携の不備である。

4.3. 子どもと向き合う時間の減少
生きる力の育成には、個々への指導が鍵となる。つまり、そうした時間の確保が今まで以上に求められるのだ。授業研究などの、教員の質を高める取り組みや部活動の指導など、残業時間は増えるが子どもと接する時間は減るという減少が起きている現在、「教職員の配置」「ICTを含めた設備」などの充実といった、環境の整備が求められる。


5. 指導要領改訂の考え方

5.1. 義務教育の目標と生きる力
21世紀を切り開く豊かでたくましい日本人の育成を目標に、正義・責任・自然への愛・公共の精神・郷土愛といった、国際平和を尊重できる子どもの育成を目指す方針からの改訂である。これらの基礎となるのが、「生きる力」である。

5.2. 生きる力の理念の共有のために
5.2.1. 変化への対応の大切さの共有
変化が激しい社会において、自らの道・これからの社会を切り開く能力の必要性がある。
5.2.2. 基礎能力の定着の必要性の共有
「生きる力」には、「基礎の知識技能」とその活用力が必要である。反復や個人指導による基礎の定着はもちろんだが、教育全体ひいては家庭においても、活用力を育成していく体制を構築していくことが大切。
5.2.3. 自信を持つ大切さの共有
自信が無いことがコミュニケーションを妨げ、コミュニケーションへの苦手意識が自信をなくさせる。この悪循環を、コミュニケーションの基盤である「国語教育」「家庭での会話」でもって断ち切らねばならぬ。

5.3. 思考判断表現のために
以下の六点に注意し、思考判断表現能力を育成する。
「感じたことを表現する」「事実を正確に伝達する」「概念などを理解し、説明する」「情報を分析し、活用する」「課題解決とその方法の評価・改善」「多様な意見を取り入れつつ、考えを発展させる」
これらの基礎は、言語活動である。


6. 教育課程の基本的枠組み
各学校段階においてそれぞれの役割をはたすことで、進級や進学における円滑な接続を試みる。また、ゆとり教育におけるはどめ規定の見直しや、週五日制になってから、土日の活用も求められる。

6.1. 小中の現状とこれから
授業時数は国際的に見て平均。ただし、これに加えて、各校の裁量で課外活動を取りいれなければいけない。また、家庭における活動の促進も必要である。これらを考慮すると、授業時数はこれ以上増やさないほうがよいであろう。つまり、学校における時間編成の工夫が求められるということである。しかし現状は、災害などによって授業時数が下回らないようにとの策から、授業時数は増やされている。そうした結果、土日における課外活動が多い。授業を増やせば学力が上がるという関係性は今のところ明らかになってはいない。もっと、工夫した教育課程の編成が求められる。

6.2. 中学校における授業時数の改善
先述したように、総合などを媒体にして各教科における知識を実生活にむすびつけることや、各教科における言語活動の充実が課題。その解決のためにはまず、授業時数の増加を利用した反復活動や個人指導による基礎知識・技能の定着を図ることが重要。また、そうして得た知識技能を活用する、総合の時間の充実が大切。さらに、体験学習などの様々な発展的な学習の機会を提供し、個性と選択能力の向上を図る。

6.3. 高校の教育課程の枠組み
国民の97.7%が高校進学という実態。進学への知識を求める者、専門教育を必要とするもの、基礎学習の定着お必要とするものと、目的は様々。そこで、普通科・専門学科・総合学科・定時制・通信制などの課程が用意され、さらに科目を選択性にすることではばひろいニーズに答えてきた。こうして選択肢を広げる一方、未履修などの問題が出てきた。ただしこれは一部の学校であり、選択制を悪く言う理由にはならない。この高校における目的は、以下の三点に分けられる。
 基礎知識の定着
 義務教育との円滑な接続
 生きる力としての道徳教育
この目標の達成に向け、生徒の状況を把握した上での様々な施策が求められる。そのなかで、柔軟な教育課程を組み、「生きる力」と「言語活動」を取り入れていくことが求められる。
6.3.1. 生きる力
情報・保健体育・芸術・家庭科において、「情報モラル」や、いきるちからである「健やかな体(運動習慣・食育)」「豊かな心(芸術鑑賞)」を育てる。また、総合活動における「知識を活用する」場面の設定も必要。
6.3.2. 言語教育
国語・英語等においては、「言語を通して論理的に思考・表現する活動」や、「四技能を総合的に使った活動」が求められる。また、総合活動における「思考・判断・表現」の機会の充実も求められる。
6.3.3. 専門教科
農工商・水産・家庭科・情報・看護・福祉などにおいては、専門知識の定着を第一に置く。
6.3.4. 総合学科
産業社会と人間という科目から、進路への自覚・職業選択を促す。
6.3.5. 定時・通信
学びたいという動機は他と同じ。柔軟なカリキュラムで対応していくことが大切。


7. 教育内容に関する改善
次の点があげられる。「言語教育」「理数教育」「伝統文化に関する教育」「道徳教育」「体験活動」「小学校での外国語活動」「社会の変化への対応」。この中からいくつか取り上げて説明する。

7.1. 伝統や文化に関する教育
自国の文化の良さを継承・発展させつつ、他の文化にも敬意を払うことができる人材の育成。この教育は、全教科を通してなされる物である。特に国語では書物について、社会科では文化の歴史的発展に関して、芸術の分野では日本の芸術に親しむことに関して、それぞれ指導していく。

7.2. 小学校段階における外国語活動
進展するグローバル社会に対応すべくなされる活動。中学校の初段階における「挨拶活動」などは、むしろ小学校で行うに適しているという点もあり、導入された。音声に重視することで、コミュニケーションに必要な能力を養う。中学校のみで4技能を扱うことは難しく、「聞く・話す」を小学校に移した。小学校英語では、音声の習得が望まれる一方、細かな表現の習得にはつながりにくい。したがって、コミュニケーションを重視した内容にすべきとの指摘がある。コミュニケーションの重視に当たって、様々な国の人とのコミュニケーションを想定する必要もあり、英語以外の外国語に触れさせる必要性もある。

7.3. 社会の変化への対応
社会の変化に対応すべく、情報教育による「情報モラル・情報リテラシー」の育成、環境教育による「自然と矯正していける人材」の育成、キャリア教育による「主体的に社会参画できる人材」の育成、食育・モノづくり教育による「伝統や文化を重んずる人材」の育成、安全教育による「自己の安全を守り、安全な社会の形成に人力できる人材」の育成などが求められる。また、その基礎となるのが「子どもの心身の発達」であり、これには学校ぐるみの取り組みや個人指導などが大切である。



8. 各教科・科目等の内容
幼稚園・小学校は省略。中高の国語・外国語についてのみ取り上げる。

8.1. 国語
とにかく言語教育の充実を図ること、国語に対する関心・国語を尊重する態度を育成することが大切。発達段階に応じた具体的な目標を定めることが重要。さらに、敬語や読書についての指導も忘れてはならない。古典の指導においては、生涯にわたって古典に親しめる生徒を育成する。
8.1.1. 中学校
小学校までの知識を活かし、これからの社会生活に必要な国語力を育成する。特に、「発表」「討論」「解説」「鑑賞」「漢字の読み書き」「敬語」「読書」といった言語活動を充実させることが大切。また、古典などの指導においては、歴史的背景をからめるなどした、興味をそそる内容にする。また、有名な作品を取り上げることも重要。
8.1.2. 高校
中学校の内容をより発展させたもの

8.2. 外国語
「聞く」「読む」を通して得た知識を活かし、「話す」「書く」につなげていく工夫が必要。文法は、こうしたコミュニケーション活動を支えるものとして捉え、教えていく。
8.2.1. 中学校
小学校での音声活動を発展的に扱い、それらを「読み書き」に適応させていく指導が必要。これに関しては、「まとまった文章を読み、そこから得られる情報を整理し、それらをもとにまとまりのある、一貫した文章を書く」という活動の充実が大切である。また、様々な国の文献を読む・様々な国の人達と交流するといった活動の中で、国際理解に向けたコミュニケーション活動を充実させていくことが必要。
8.2.2.高校
4技能を総合的に育成することが目的。「コミュニケーションⅠ」ではコミュニケーションの基礎を、「コミュニケーションⅡ・Ⅲ」では、その基礎に基づき、さらなる英語力の向上を目的とする。また、音声中心の「英語会話」、スピーチ・ディスカッションなどの「英語表現」といった授業で、論理的思考力や表現力といった力も育成する。


9. 教師が子どもと向き合う時間の確保などの教育条件の整備等
効率的・効果的な指導には、個人指導が必要不可欠である。そのためには、教職員定数の改善や、外部の人材の活用、事務仕事の軽減、さらには、ICTの活用による様々な取り組みが期待される。こうした取り組みにおいては、学校の組織力が大きな鍵であるため、全教員が共通認識のもと、協力して取り組んでいけるような環境整備が必要である。また、こうした取り組みを瓢阿することも大切であり、PDCAシステムの導入が期待されている。


10. 家庭・地域・企業・大学との連携において求められること
家庭や地域との連携や、そのための信頼を得る取り組みはもちろんのこと、企業・大学などと連携を取ることも大切である。雇用形態問題への対応として、企業への関心度を向上させる取り組みや、子どもに有害な情報から子どもを守るための施策等の考案・実施は、企業の協力無しには達成できない。また、こうした取り組みを継続していくため、大学との連携や円滑な接続が必要である。

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